地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

ソーシャルなひと

2016.02.25 政策研究

縁に代わる新たなセーフティネットの構築を目指して【フードバンク山梨】

LINEで送る

これまでの活動

 フードバンク山梨では市民、企業、行政との協働により、生活困窮世帯に食料支援を行う「食のセーフティネット事業」を実施しています。食のセーフティネット事業では、食品企業や市民から寄附していただいた食品を、行政の福祉課や社会福祉協議会、民間支援団体等、49の機関・団体と連携し困窮世帯に届ける活動です(図1)。

図1 食のセーフティネット事業概要図図1 食のセーフティネット事業概要図
 

 2014年度には17の市町村福祉課、6つの県機関、社会福祉協議会20団体、民間支援団体6団体の合計49の機関、団体と連携確約書を締結しており、連携機関からの申請をもとに454世帯、1,007人に対して4,379件の食料支援を行いました。また、支援人数のうち358人(全体の35.6%)は19歳以下の子どもでした。2014年度の年間食品取扱量は105トンで、約40トンが個人への支援、その他は児童養護福祉施設や障害者福祉施設に提供しています(図2、3)。

図2 食料支援件数推移図2 食料支援件数推移

図3 連携確約書締結機関数推移図3 連携確約書締結機関数推移

「縁」の衰退と生活困窮者の増加

 2015年4月の生活困窮者自立支援法施行により、全国の自治体に相談窓口が開設され、生活困窮者への相談支援と住居確保給付金の支給が必須事業として実施されています。これまで生活保護の水準近くで生活している困窮者で生活保護に該当しないケースでは、公的な支援を受けることができませんでしたが、生活困窮者自立支援制度が施行され、これまで社会保障制度のはざまで支援が受けられなかった生活困窮者への支援が可能になりました。また、必須事業のほかにも就労準備支援、一時生活支援、学習支援、家計相談支援事業などの任意事業があります。
 リーマン・ショック後に生活困窮者が急増したのは、経済状況の悪化に加え本来セーフティネットとして機能するはずの地縁、血縁、社縁などの「縁によるセーフティネット」が衰退していたことも原因だと考えています。
 例えば、職を失い、お金がなくなり、住まいもなくし、食べる物もないという大変な状況を考えてみます。親族との良好な関係があれば、このような大変な状況でも実家に戻れば住むところがあり、食事も出してくれるでしょう。さらに、仕事がなければ仕事を見つけてくれたり、それができなくても親身になって一緒に仕事を探してくれると思います。またお金がなければ、経済面でも支援してくれるかもしれません。このように血縁は、衣食住や職、経済面に至るまで、緊急時にセーフティネットとして機能していました。子どもに関しても、祖父母が近くにいれば、子どもが熱などを出したときに一時的に預かってくれたり、近所付合いがあれば、ご近所のおばさんたちが小さい子どもを見てくれました。子ども同士で遊ぶ居場所や関係性も地域の中にたくさんあり、現在のように貧困世帯の子どもが孤立することを防いでいました。
 これらの縁によるセーフティネットが衰退した昨今、これらを埋め合わせるために、現在NPO等が病児保育やこども食堂、生活困窮者自立支援制度の任意事業である一時生活支援、就労準備支援、学習支援、家計相談支援など、様々な事業に取り組んでいます。これらのNPO等が行う活動は、縁により支えられていたセーフティネットを代替する新たなセーフティネットになり得る可能性があります。しかしながら生活困窮者自立支援制度に基づく事業が、2015年の4月から取り組みが始まったばかりであり、任意事業に関してはまだ取り組みが進んでいない自治体も多く、縁によるセーフティネットを代替するまでには至っていません。

日本おける子どもの貧困は見た目では分かりづらいのが現状日本おける子どもの貧困は見た目では分かりづらいのが現状

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る