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2016.01.15 政策研究

大阪、京都も森林環境税導入〜37府県、税収は300億円~地方自治体に定着、国新税と対立も

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進化してきた森林環境税

 森林環境税の使途は、自治体の置かれた状況によって異なる。森林の整備だけでなく、里山の手入れ、地元で生産された木材の利用にまで徐々に拡大され、進化してきたと分析できるだろう。
 京都府の「豊かな森を育てる府民税条例」は「豊かな森を育てる府民税基金」をつくる条例とセットになっている。個人の府民税均等割に600円を上乗せし、課税期間は5年間で、税収は年6.8億円を想定している。
 税収をいったん基金に入れることによって、別会計として透明性を持たせた運用が一つのパターンだ。これまで京都府は、個人の府民税均等割が復興増税の関係から1,500円(2024年度以降は1,000円)になっていることもあり、増税には慎重な姿勢を示してきた。
 だが、大阪府と同様に森林の問題に持続的に対応すること、京都府内産木材の生産・加工から消費に至るまでの大きな循環型の仕組みをつくる必要があるとして導入に踏み切った。
 このため税収の活用方法としては、①森林の整備・保全=荒廃した里山の危険木の伐採、林地残材の整備・処分、荒廃した竹の伐採など、②森林資源の循環利用と木の文化=公共施設の木質化の推進、府内産木材を利用した新製品開発の支援など―といったように、大阪府とは違って木材利用を一つの柱に据えている。
 森林環境税は高知県が県会議員の発案もあって、全国で初めて導入した。背景には、2000年の地方分権一括法によって法定外目的税の制度が導入されるなど自治体が独自課税できる雰囲気が出てきたことが大きい。このように当初は地方自治の意識が背景にあったと言える。
 2014年4月から34番目に導入した群馬県は「昔は利根川の上流にある県として、下流県に費用の負担を求める『水源税』の必要性を訴えてきた。下流県は水資源という形で、森林整備の利益を得ているからだ。このため自県だけで必要な対策費用を集める森林環境税の話ができなかった」と遅くなった理由を説明する。
 導入の理由としては、植林して放置されたままのスギ林の荒廃に加えて、竹林の侵入で荒れる里山や平地林など新たな課題への対応などだ。むろん、対策に必要な年8億2,000万円の確保は、財政難や国の補助金削減もあり難しく、独自課税に踏み切った。
 「ぐんま緑の県民税」は県民税均等割の超過は個人が年700円、法人は税額の7%相当の上乗せとなっている。導入に際しては「里山や平地林の整備など市町村の提案事業にも毎年2億6,000万円を充てる」など、全市町村にメリットがある制度にすることで同意を得やすいよう工夫している。
 三重県は、流木の除去や流木になりそうな渓流沿いの立木をあらかじめ伐採する事業を柱に据えた。「使える国の補助金がないため、県独自で実施する」ことを導入の理由に挙げている。
 2005年4月に導入した熊本県は、戦後の拡大造林の時代に植林した急傾斜地や山奥にある民有地での間伐に力を入れる。スギやヒノキの4割ぐらいを切り倒すという「強度間伐」を実践することで、日の光を入れ広葉樹の生育を促し、自然に近い混交林に戻していく。
 この全国でも初めての試みは、他の自治体にも広がり、自治体発の林業施策として定着してきた。森林環境税の大きな成果だろう。さらに木材の利用を促すため幼稚園や保育園などが木製の机やいすを購入する際の助成にも使っている。
 上乗せ課税する特例期間を延長する際にも、いろいろと工夫がなされている。長野県では2013年4月から2期目をスタートさせた。外国資本による水源林の買収に備えるため、市町村による水源林の購入にも新たに補助することにした。
 福島県は2016年4月から5年間延長するが、「森林認証制度、直交集成板(CLT)への取り組みを強化する」としている。

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