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立法事実から見た条例づくり

2015.12.10 政策研究

北海道ニセコ町水道水源保護条例・地下水保全条例と立法事実の記録管理(上)

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3 水環境関係条例の制定過程

(1)条例制定の背景
 町の農業・観光は、良好な自然環境に支えられている。町では、その認識が共有化されていた。すなわち、町では、2002年に環境基本計画が策定され、2003年に環境基本条例が制定されていた(条例は2004年4月施行)(9)が、環境基本計画には、当初から水源地がある水源地周辺不伐の森林保全条例制定の検討を基本行動目標に掲げていた。
 そうした町の環境保全に関する各種取組として、景観条例の制定(2004年)、尻別川流域7町村で制定した統一条例である「ニセコ町の河川環境の保全に関する条例」の制定(2006年)、無秩序な投資開発、投機的土地取引への警戒と対策に向けた準都市計画・景観地区の指定(2007年)(10)、特定用途制限地域指定(同年)(11)などがなされていた。
 なお、2010年前後は、外国人による日本の森林(水源地)買占めが全国的な問題となっていた。特に当時における外国人の森林買占めの件数・面積の9割は北海道でなされていた。ただし、ニセコ町では具体的な外国人による土地売買事例は、本件2条例制定当時は見られなかった(12)

(2)条例の制定過程
 本件2条例制定の検討は、2010年10月頃から始まった。以後約6か月の間に、庁内での検討、町民との意見交換(2011年3月のまちづくり町民講座)、パブリックコメント(同月)等を経て、同年4月の臨時議会において、水道水源保護条例及び地下水保全条例並びに関連して水資源保全審議会設置条例が制定された(いずれも同年5月施行)。執行機関当局(庁内)における条例案の検討にあっては、既存法令との関係や規制手法の実効性確保等の検討に時間を要したとされる。当初、水道水源保護条例と地下水保全条例の一本化も検討されたが、目的が異なることから別々に分けている(13)
 さらに、後述のとおり、本件2条例には罰則(条例違反に対する刑事罰)規定もある。いわゆる検察協議では、検察庁から、量刑の範囲に関する指摘はなかった(質問に対する回答から)。
 なお、罰則付きの規制的条例であるのに本件2条例案の検討期間は、約6か月間とかなり短い。条例制定当時は町内で様々な観光開発の動きが見られたため、足早に条例制定の準備が進められたとのことである(質問に対する回答から)。

4 水道水源保護条例の概要

(1)目的
 本条例は、「自然ゆたかな水環境と安全で良質な水を確保するとともに、良好な水環境を将来の世代に引き継ぐことを目的」とする(1条)。

(2)目的達成手段
① 水源保護地域の指定(5条)
 町長は、「水源保護地域」を指定できる。指定に当たっては、関係図書を縦覧に供して意見を聴くほか、水資源保全審議会(以下「審議会」という)に諮問して意見を聴く。水源保護地域の指定は、告示により行う。
② 協議対象施設と協議書提出
 給排水を利用する施設、砂利採取場等、産業廃棄物処理施設等、水質汚濁防止法に定める特定施設は、本条例で「協議対象施設」とされる(2条4号、別表)。
 協議対象施設の設置(内容変更を含む)予定者(協議者)は、所定の協議書を町長に提出して協議する義務がある(8条1項)。協議書提出の時期は、施設ごとに関係法律に基づく設置許可等の申請前までである(9条)。さらに、町長への協議書提出前に、協議対象施設の事業内容並びにその事業活動に伴う水道水源への影響及びその防止策について、関係住民に対する説明会を開催する義務がある(10条)。
③ 規制対象施設に係る認定
 協議を行った町長は、水道の水質保全・水源の水量への影響という観点から、協議者に対し、必要な措置をとるよう助言・指導することができる(8条2項)。
 また、町長は、協議があった場合、審議会の意見を求め、規制対象施設であるか否かの認定をしなければならない(同条3項)。町長は、当該協議対象施設を次の規制対象施設であると認定したときは、文書をもって当該協議者に通知しなければならない(同条4項)。
 本条例において規制対象施設とは、水道の水質を汚染するおそれのある施設、水源の水量に影響を及ぼすおそれのある施設、水源涵養となる樹木の伐採が必要となる施設、取水を目的として水源の枯渇を招くおそれのある施設をいう(6条1号~4号)。
 そして、何人も規制対象施設を設置することができない(7条)。
④ 実効性確保等
 協議者が協議の手続や説明会に係る条例の規定に反しているときは、町長は、勧告をすることができる(11条)。
 無協議での協議対象施設の設置者、規制対象施設の認定がされたのに協議対象施設の設置に着手した者などに対し、町長は、中止命令を発することができる(12条)。命令違反者には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が科される(16条)。
 さらに、町長は、正当な理由がないのに上記勧告・命令に従わない者につき、氏名等を公表できる(事前に意見陳述の機会が必要。14条)。
 本条例は、2011年5月1日施行だが、協議義務等の規定は、同年9月1日施行である(条例附則)。

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