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立法事実から見た条例づくり

2015.06.10 政策研究

豊島区マンション管理推進条例 ─支援の条件整備による管理不全の予防に向けて─

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名城大学准教授 北見宏介

1 はじめに

 今回取り上げるのは、「豊島区マンション管理推進条例」(平成24年豊島区条例39号、以下「本条例」という)である。マンションに関連した条例の制定は従来からも見られたが、本条例はマンションの「管理」局面に係るものであり前例が少なかったこと、また「マンション管理状況届出書」の提出を義務付けるとともに、サンクションに関する規定を置いていることからも注目を集めた。

2 条例制定の背景

(1)豊島区の概況と特徴
 東京特別区部の北西に位置する豊島区は、平成22年国勢調査において、人口密度が全国1位(218.8人/ヘクタール)となった。また、平成2年から22年の間で人口動向は8.7%増となっている。
 さらに特徴的なこととして、住民の約3人に1人が単身者であり、全世帯に占める単身世帯割合は60.8%となっている(平成2年から22年の間での単身世帯は、65.7%増)。
 こうした人口密度や単身世帯割合の数値が示唆するとおり、土地の高度利用が進んでいる。区内の居住世帯のうちおよそ8割が共同住宅に居住をしており、住民の6割以上がマンション住民である。

(2)政策課題の認知
 このように、豊島区においてはマンションという存在が持つ政策上の重要度が高かったといえる。豊島区はすでに平成15年に「豊島区狭小住戸集合住宅税(通称ワンルームマンション税)」を創設していたほか、平成16年には「豊島区中高層集合住宅建築物の建築に関する条例」(平成16年豊島区条例35号、以下「平成16年条例」という)を制定していた。
 さらに、行政組織面でも、いわゆる行政のスリム化の声がある中にもかかわらず、平成22年度にはマンション担当課長が新たに置かれている。その要因としては、議会の会派からの要望や、町会連合会からの要求があったという。
 また豊島区では、こうした動きと前後して区内の分譲マンションに関する実態調査を、平成10年度、11年度、14年度、22年度の計4回行っている(1)。本条例に直結する調査は、平成22年のもの(「豊島区分譲マンション実態調査」(回収率41.3%))である。
 この調査結果につき報告書は、課題として、管理組合役員のなり手不足、マンション管理に関する情報の不足、マンション管理への関心の低さ、大規模修繕工事への支援、防災への取組の不足、耐震化や建替えの検討の遅れ、居住者間及び地域とのつながりの希薄さ、といった諸点を挙げていた。そして報告書は、各マンションへの支援の方向性として、①良好な維持管理に向けた誘導や啓発、②情報提供の充実や提供手段の検討、③相談体制の充実と専門家の活用、④管理組合との連絡体制の構築、⑤大規模修繕・耐震化・建替えの検討への支援、⑥管理組合や居住者組織の活性化支援、⑦管理会社との協力関係、を挙げていた。
 こうした支援に向けて豊島区では、マンション管理士会の協力を得て、マンション管理士の無料派遣をはじめとした制度を創設していた。また、調査に先立って専門家によるマンション管理セミナーを開催していたほか、建築局面を対象とする平成16年条例においても一定の規定が置かれていた。例えば、⑥の活性化支援に関連して平成16年条例21条では、「建築主は、地域コミュニティの形成のため、入居者等……の町会等への加入に関して、町会等と協議を行わなければならない」としていた。しかし同条例の適用は、区内に「建築される」ものが対象とされていたことから、既存のマンションは対象とならなかった。そこで、既存マンションを含めたマンション管理に関する条例の制定が検討されることとなった。

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