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立法事実から見た条例づくり

2015.05.25 政策研究

連載・立法事実からみた条例づくり ─検討の枠組み

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3 条例の立法事実論の意義と体系

(1)条例の立法事実とその内容
 本連載では、条例の立法事実を、「条例の適法妥当性を支える一般的な事実(当該事実に係る将来の予測を含む)」と定義する。立法事実の語は、憲法論にあって「違憲審査に限局される形」で用いられることが多いが、本連載では、もう少し広く一般的に「法を支える事実」(1)という意味で、これを用いている。
 やや詳しく見ると、まず、定義中の「事実」とは、「ナマ」「裸」のそれではない。条例が適法妥当であると判断する根拠となる事実であるから、法的な価値判断を経て規範的に処理をされた事実ということになる(2)
 次に、この定義中の適法妥当性は、必要性・合理性を備え、かつ、「法令(国法)に違反しない」という(非法令抵触性)要件を充足することを意味する。必要性は条例の目的の法的妥当性と、合理性は当該目的達成のために条例で規定する手段の妥当性と言い換えてもよい。目的妥当性、手段妥当性のそれぞれについて、これを裏付ける事実が必要だということである。
 さらに、本連載において、条例内容の合理性は、①実体的合理性と、②内容形成過程の合理性(条例内容形成における判断過程の合理性)、③当該内容の形式的合理性(法制執務的合理性)(3)の3つで構成されると考えられる。
 つまり、条例が立法事実を備えているといえるには、必要性、実体的合理性、内容形成過程合理性、形式的合理性、非法令抵触性の要件それぞれを充足させる事実を要するのである。なお、非法令抵触性は、法律と条例の関係(法律の先占問題)と重なる。条例論の一部である立法事実論の要素として、法律と条例の関係全般が組み込まれるのでは、体系性を欠くという指摘もあるだろう。
 これらの枠組みは、筆者の試論であって、理論的な完成に至っていない。各回の具体的検討を踏まえつつ、枠組みを再検討したい。

(2)条例の立法事実論の体系(試案)
 筆者は、条例の立法事実論を、①立法事実要件論、②立法事実顕出手法論、③立法事実認定確定手続論、④立法事実効果論に分類して体系化している。
 第1の立法事実要件論は、ある条例が立法事実を備えていると判断するための立法事実の充足要件、つまり立法事実の内容に関わる議論である。
 第2の立法事実顕出手法論は、立法事実の判断主体ごとに、これを顕出する場合の手法及びその法的統制について扱う。例えば、条例制定時であれば、主に執行機関(首長等の部局)が条例案を立案する際における立法事実の顕出に向けた手法、技法を扱う。
 第3の立法事実認定確定手続論は、立法事実顕出手法論と(特に訴訟の場合は)内容面で区別しにくいが、立法事実認定確定の手続に係る法的規律を論ずる。主権者(住民)にとっての立法事実という観点からの、立法事実の記録管理と公開についても、ここでの議論に該当する。
 最後の立法事実効果論は、立法事実を備えていない条例の法的効果について問う。

(3)条例の立法事実の構成要素
 立法事実といっても、実に様々な事実があるので、何をもって必要性・妥当性・非法令抵触性を裏付ける立法事実になるのか、不明確である。筆者は、おおよそ①地域環境、②住民意識、③法制度環境(法環境)、④組織環境という4つのテーマ又は分野に分けて、立法事実として必要な事項を抽出してはどうかと考えている。
 第1の「地域環境」とは、土地利用(都市計画)の状況、自然の状況、地域経済の状況、環境基準の適合状況、人口動態、雇用統計、その他のまちづくりの指標などで構成される。おおむね客観的な地域の状況・姿を想起している。
 第2の「住民意識」とは、その政策課題に関わる住民の主観的な事実認識とこれに対する解決策についての意見や意向、考え方を広く意味する。その把握方法としては、世論調査、アンケート、その他の住民参加手続を想起できる。
 第3の「法制度環境(法環境)」とは、その政策課題に関わる法制度(の現状)のことをいう。その政策課題に現に適用されている国の法令や他自治体の条例等の内容のほか、法令・条例の執行体制・執行状況がここでの法制度環境(法環境)に含まれる。
 最後の「組織環境」とは、その自治体の当該政策課題に対する組織体制・人員や、財政状態(保有資産を含む)、首長の選挙公約、関連の政策・施策・事務事業や行政上の計画等をいう。

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