九州大学法学研究院准教授 田中孝男
1 はじめに
本連載は情報誌『議員NAVI』44号(2014年。以下「前誌」という)から連載を始めた。前誌には、事例研究に当たっての条例の立法事実に関する議論体系の枠組みを初回に提示してある。本連載における条例の立法事実の検討枠組みの知識を、ウェブマガジン読者にも共有していただきたいと思い、ごく簡単に、「条例の立法事実(論)」の検討枠組みと、連載各回の構成内容を紹介する。田中孝男「条例の立法事実とは何か(総論)」(前誌44号36〜43頁)も参照していただければうれしい。
2 連載の意義・目的
条例にとって、いわゆる立法事実が重要であることが、広く指摘されている。しかし、
① ある条例が的確な立法事実を備えているというのはどのようなこと又は状態をいうのか。
② 条例(案)を立案するときに、どのような方法で、立法事実を法的に明らかなものにしていくのか。
③ 条例に求められる立法事実とはどのような内容を備えるべきなのか。
といったことに関して、共通の理論や検討の枠組みは、未確立であると思われる。
そこで、自治体が、政策的な条例を制定するに当たって収集・認定した立法事実の具体的蓄積を通して、条例の立法事実論の体系と内容、立法事実認定にとって望ましい手法、手続を明らかにしていきたい。本連載は、このような趣旨をもって、企画されている。