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2015.05.11 政策研究

議員提案による長野市農業振興条例の制定過程

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4 条例の制定過程

(1)条例に盛り込むべき事項についての各委員の意見
 条例案の作成に向け、まず特別委員会委員から条例に盛り込むべき事項について意見を出してもらいました。
 各委員からは、市、農業者、農業団体、事業者及び市民の役割を明記すること、農業振興の基本方針として農業の担い手及び後継者の確保、耕作放棄地対策、市内産農産物の消費拡大、地域ブランドの確立、農村の振興、多面的機能の維持向上等を定めること、農業振興に関する計画を新たに策定すること、施策の実施状況等を検証するための審議会を新設することなどを、条例に盛り込むべきであるとする意見が多く出されました。

(2)小委員会の設置と骨子案の作成
 特別委員会では、各委員からの意見を踏まえつつ、条例案の検討をどのように進めていくかについて協議しました。その結果、長野市議会会議規則102条の規定に基づき、平成26年6月に特別委員会に小委員会を設置し、行政側との調整も含め、条例骨子案を作成することとしました。小委員会は、特別委員会から選任された委員3人で組織され、書記を置くとともに、行政側から農林部及び農業委員会事務局職員の8人が参加しました。
 小委員会は、同年7月から8月の2か月間に7回の会議を開催し、行政側との調整を図りながら、精力的に骨子案の作成を行いました。
 小委員会では、まず議会側から、これまでの調査結果と特別委員会委員の意見を反映した骨子案のたたき台を作成し、行政側に提示しました。行政側は、そのたたき台に対し修正案を提出し、その修正箇所を中心に行政側と議会側の協議、調整が行われました。
 協議の主な論点は、次の3点であったといえます。1点目は農業振興に関する計画を新たに策定するかどうか、2点目は審議会を新設するかどうか、3点目は実施状況の検証と公表をどのように行うかでした。
 議会側としては、農業振興施策の取組や成果が見えてこないという問題意識から、その実効性をどう担保し、具体化していくか、そのために、条例に基づく新たな農業振興の施策体系を確立していくという強い意向がありました。したがって、条例を制定し、その下に農業振興に関する計画を新たに策定し、その計画の実施状況を検証する審議会を新設するとともに、農業産出額等の農業の状況を示す数値や施策の検証結果を記載するなど実施状況の公表内容の充実が必要であるとしました。
 行政側からは、農業振興条例の制定及び農業振興に関する新たな計画の策定自体には賛同しながらも、第4次長野市総合計画及び長野市産業振興ビジョン(産業間の連携を中心とした計画)との整合や、既存の審議会との重複といった課題を指摘する意見が出されました。
 小委員会での調整の結果、1点目は条例に基づく計画として(仮称)農業振興計画を新たに策定すること、2点目は審議会について、既存の長野市産業振興審議会農業振興専門分科会の一層の充実を図ること(委員構成、開催回数、審議内容等)、3点目は実施状況の検証と公表について、農業産出額等について何らかの形で市独自に推計し農業の状況を把握するとともに、施策の検証について改善を図りながら、実施状況の公表内容を充実させること、以上3点が行政側と議会側との合意点となりました。
 同年8月11日、小委員会は行政側との調整を経て骨子案を作成し、特別委員会に対し中間報告を行いました。

(3)特別委員会での骨子案の決定
 特別委員会では、小委員会からの骨子案の中間報告について協議が行われました。
 特別委員会においては、人間にとっての食料の重要性について条例上どのように位置付けるか、安全安心な農産物の供給について規定すべきである、平たん地から中山間地域という本市の地域特性を考慮した施策展開を図るよう規定すべきである、既存の長野市産業振興審議会を活用するなら、農業振興専門分科会の人員構成、開催回数、審議内容等について全面的に見直すべきだ、農業振興施策の実施状況について毎年度議会に報告し、議会でもその内容を委員会等で検証すべきだ、といった意見が出されました。
 中間報告に対する特別委員会の意見を踏まえ、小委員会において再度検討し、平成26年8月28日に小委員会から特別委員会に対し骨子案の最終報告を行い、同年9月12日、小委員会からの最終報告を基に、特別委員会において(仮称)長野市農業振興条例骨子案を決定しました(4)

(4)骨子案に関する全議員説明会の開催
 平成26年9月22日には、「全議員を対象とした(仮称)長野市農業振興条例骨子案説明会」を開催しました。全議員説明会では、題名や定義、施策の数値目標、農業6次産業化の推進、販路拡大など、7件の意見が出されました。

(5)骨子案に対する市民意見の募集と農業関係団体との意見交換の実施
 平成26年10月14日から11月14日までの1か月間、骨子案について市民の皆さんに広く意見を聴くため、市議会として「市民等を対象とした(仮称)長野市農業振興条例骨子案に対する意見募集」(パブリックコメント)を実施しました。市民の皆さんからは、地域農業の活性化を求めることなど、2件の意見をいただきました。
 また、市民意見の募集期間中の11月4日、特別委員会において、農業関係団体から7人の皆さんを参考人としてお呼びし、骨子案に対する意見をお聴きしました。
 農業関係団体の皆さんからは、農業団体の責務に農業者への農業に関する情報提供について定めることで農業団体の役割がより鮮明になる、新たに策定する振興計画は中長期的な展望を持った内容にしてほしい、本市農業の柱は果樹栽培なので政策の方向性を定めて、思い切った施策をとってほしいなど、9件の意見、要望をいただきました(5)

(6)条例案に関する全議員説明会の開催と特別委員会での条例案の確定
 骨子案に関する全議員説明会、骨子案に対する市民意見の募集及び農業関係団体との意見交換においていただいた意見等を踏まえ、平成26年11月28日、特別委員会において骨子案を一部修正の上、長野市農業振興条例(案)を決定し、同年12月3日には、「全議員を対象とした長野市農業振興条例(案)説明会」を開催しました。2回目となる全議員説明会では、前文や定義、振興計画への議会意見の反映など、3件の意見が出されました。
 特別委員会において再度検討した上で、同年12月9日、長野市農業振興条例(案)を確定しました。

(7)本会議への条例案の上程と可決
 平成26年12月市議会定例会において、特別委員会の委員会提案により、長野市農業振興条例(案)を本会議に上程し、同年12月16日、全員賛成で可決となりました。本条例は、同年12月25日に公布され、平成27年1月1日から施行となりました。

表 長野市農業振興条例の主な制定経過表 長野市農業振興条例の主な制定経過

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