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2015.04.10 政策研究

〈地方財政〉平成27年度地方財政計画と地方創生

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(1)まち・ひと・しごと創生事業費の創設
 「地方公共団体が自主性・主体性を最大限発揮して地方創生に取り組み、地域の実情に応じたきめ細かな施策を可能にする」という観点から、地方財政計画の歳出に「まち・ひと・しごと創生事業費」を創設する。まち・ひと・しごと創生事業費1.0兆円。
 財源の中身は、既存の歳出の振替え0.5兆円と、新規の財源0.5兆円の合計1兆円である。振替え分とは、
 ・2014年度に、地域の元気創造事業費として算定・計上されていた0.35兆円の全額。
 ・歳出特別枠(2014年度1.2兆円が減らされて残ったもの)の一部0.15兆円。
 合わせて0.5兆円。つまりこれは、2014年度の費目の名称変更、看板の掛け替えである。
 残りの新規の財源0.5兆円の内訳は、
 ・法人住民税法人税割の交付税原資化に伴う偏在是正効果0.1兆円。
 ・地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金の活用0.3兆円。
 ・過去の投資抑制による公債費減に伴い生じる一般財源の活用0.1兆円。
 合計0.5兆円である。
 法人住民税法人税割の交付税原資化に伴う偏在是正効果というのは、不交付団体の法人住民税の一部を国税にして、それを交付税として配っているもの。原資は不交付団体の法人住民税の一部ということになる。国のお金ではない。これは不交付団体には評判が悪いので、いつ巻き返しに遭うか分からない。最大の財源の出し手は、もちろん東京都。総務省としては、「今後、偏在是正を更に進めること等により恒久財源を確保する方針」と決意を述べている。
 地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金の活用0.3兆円というのは、自治体が設立した金融機関である地方公共団体金融機構の準備金を吐き出させて取り崩すもの。国のお金ではない。
 過去の投資抑制による公債費減に伴い生じる一般財源の活用0.1兆円というのは、低金利で実際には財政需要が少なかったという計算上の余剰で、国のお金とはいえないもの。新規分0.5兆円は、いってみれば空財源である。あるいは自治体同士が自分たちで融通するものである。
 さて、この事業費の地方交付税における算定は、普通交付税において、各自治体が「まち・ひと・しごと創生」に取り組むための財政需要を、既存の「地域の元気創造事業費」(これは2014年度創設)及び新たに創設する「人口減少等特別対策事業費」(交付税法改正により当分の間置くとされている)により算定する。「人口減少等特別対策事業費」の算定に当たっては、人口を基本とした上で、まち・ひと・しごと創生の「取組の必要度」及び「取組の成果」を反映させる。
 「人口減少等特別対策事業費」の算定に用いる指標としては、取組の必要度(現状の指標が悪い団体に割増し)として、人口増減率、転入者人口比率、転出者人口比率、年少者人口比率、自然増減率、若年者就業率、女性就業率、有効求人倍率、1人当たり各産業の売上高などが考えられている。取組の成果(指標を改善させた団体に割増し)としては、人口増減率、転入者人口比率、転出者人口比率、年少者人口比率、自然増減率、若年者就業率、女性就業率などだ。
 一方、既存の「地域の元気創造事業費」については、2014年度の算定方法を基本的に継続する。算定に用いる指標は、地域経済活性化の成果として、産業関係では、第1次産業産出額、製造品出荷額、小売業年間商品販売額、延べ宿泊者数など。雇用関係では、若年者就業率、従業者数、事業所数など。その他では、1人当たり県民所得、1人当たり地方税収、転入者人口比率など。ここまでは分かりやすい指標だが、次の行革努力の取組として挙げられている指標は、「地域の元気」を創造するという目的からは、異質な感じがする。指標としては、職員数削減率、ラスパイレス指数、人件費削減率、人件費を除く経常的経費削減率、地方債残高削減率などであった。

(2)公共施設等総合管理計画に基づく既存の公共施設の集約化・複合化、公共施設の老朽化対策の推進
 公共施設等総合管理計画の策定が2014年度から始まっている。2014年度には、公共施設の除却に対する地方債措置が始められた(除却債)。2015年度は、さらに、集約化・複合化事業に係る地方債措置(公共施設最適化事業債)が創設される。公共施設等総合管理計画に基づいて実施される既存の公共施設の集約化・複合化事業であって、全体として延床面積が減少するもの(庁舎等の公用施設や公営住宅、公営企業施設等は対象外)を対象に、充当率90%、交付税算入率50%、期間2017年度までの公共施設最適化事業債が制度化される。2015年度地方債計画計上額は410億円、事業費ベースで450億円が予定されている。さらに、転用事業に係る地方債措置が創設される(地域活性化事業債の拡充)。公共施設等総合管理計画に基づいて実施される既存の公共施設等の転用事業(転用後の施設が庁舎等の公用施設、公営住宅、公営企業施設等である場合は対象外)を対象に、充当率90%、交付税算入率30%、期間2017年度までの地方債措置である。2015年度地方債計画計上額90億円。事業費ベースで100億円が予定されている。
 公共施設等の除却についての地方債の特例措置(2014年度創設)が継続される。充当率75%、2015年度地方債計画計上額340億円。事業費ベースで450億円が予定されている。
 上の文章の「充当率」とは、事業費のうち、借金で賄ってよい金額の割合をいう。充当率90%とは、頭金を10%分用意すれば、残りは借金してよい、ということを示す。「交付税算入率」とは、上の借金の元利償還金のうち、交付税の算定に計上される割合をいう。充当率が高く、算入率が高い起債は、自治体にとって、「有利」な起債にみえる。

(3)一般財源総額
 補助金、地方債、使用料・手数料などを除いた、地方税・地方交付税を中心とする自治体の使途自由財源・一般財源総額は、61.5兆円(前年度比+1.2兆円)。一般財源総額が確保されるかどうかというのが、総務省・自治体の関心事だ。その意味では、交付税総額は減ったものの、一般財源総額が増えて、やれやれという感じだろう。
 地方交付税交付金は15.5兆円(前年度比▲0.6兆円)。交付税は3年連続で下がった。交付税は下がったのだが、昨年度交付すべき、国税増収分の交付税を配らずにとっておいてそれを2015年度に交付するものだから交付税として配り、使えるお金(出口ベース地方交付税総額)は16兆7,548億円となり、16兆円台を確保した。それでもなお、前年度比▲1,307億円、▲0.8%である。交付税の減は、地方税収の増(40.2兆円、+2.4兆円)を反映している。交付税総額確保の奥の手だった別枠加算は、さらに減らされて0.2兆円に縮減(▲0.4兆円)され、ほとんどなくなった。
 臨時財政対策債4兆5,250億円(前年度比▲1兆702億円、▲19.1%)となり、減少した。地方債総額9兆5,009億円(同▲1兆561億円、▲10.0%)のところ、臨時財政対策債以外4兆9,759億円(同+141億円、+0.3%)で、臨時財政対策債が臨時財政対策債以外の地方債を上回る現象は、今年は解消した。

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