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2015.04.10 政策研究

〈地方財政〉平成27年度地方財政計画と地方創生

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地方財政計画とは

 地方財政計画は地方交付税法第7条によって、毎年必ず策定され、「国会に提出するとともに、一般に公表しなければならない」と定められている。今年議論が始まったのは、2月26日の衆議院本会議からであった。高市早苗総務大臣、例年に比べても計画の内容には踏み込まず、相当素っ気ない国会提出であった。それを補ったのは、次に登壇した石破茂地方創生担当大臣だった。
 「国の(まち・ひと・しごと)総合戦略におきましては、地域の実情に応じたきめ細やかな施策を可能にする観点から、地方創生の取り組みに要する経費について、地方財政計画の歳出に計上するとともに、地方交付税を含む一般財源を確保することとされております。(中略)地方公共団体に対しては、地方版総合戦略の策定を求めておるところであり、平成28年度以降に地方版総合戦略に基づく施策の実施が本格化することが見込まれますので、必要な財源を安定的に確保することが重要であると考えております。」 と、2016年度以降のことについても踏み込んでいる。もちろん具体策はまだ未定だとしても。石破大臣も指摘するように、今年の地方財政計画の特徴の第1は、地方創生経費だ。語呂がいいように、地方創生1兆円を計上した。地方創生を地方交付税が担う。これまでの議論は、地方創生交付金という国の補助金の話だったが、地方財政計画では、地方交付税の算定の仕方と使い道というテーマになる。地方財政の議論としてはうってつけだ。法律の改正で「人口減少等特別対策事業費の基準財政需要額への算入」を実現する。
 上で述べたように、地方創生交付金であったら話は簡単だ。何だかんだいっても国の金庫から、自治体に現金が振り込まれる。計画をつくれだの、事業計画はバラマキにならないように1件ごとに審査するだのいわれても、最後は現金に帰着する。交付金は現金「収入」だ。ところが、交付税で地方創生をやるということになると、自治体の地方創生の「支出」予定を地方財政計画にカウントするということになる。財源と直接関係なく需要を算定するということになる。地方創生1兆円という掛け声は、だから評価が難しい。
 不交付団体を例にとれば、分かりやすい。不交付団体なら、どんなに一生懸命地方創生策をやろうとも国からの現金は1円も増えない。その施策の財源は全部市税・県税だ。交付税は何も貢献していない。不交付団体ではなく、財政力指数0.99の交付団体はどうだろう。もちろんほぼ全く変わらない。財政力指数0.6の自治体ならどうだろうか。0.3なら。財政力指数にかかわらず、どの自治体でも地方創生策をやったかどうかと交付税の増減は関係ない。それが交付金・補助金ではない地方交付税の本質だ。もし交付税が増えた自治体があったとしたら、あまりにも条件が不利なために、算定が改善されたか、地方創生と全く関係ないところで算定が改善されたかのどちらかだろう。やる、やらないは交付税に関係ない。それにここ3年間は毎年交付税総額の当初算定は減らされている。全体として見れば、2015年度もどんなに地方創生策に頑張ったところで、交付税は減る。
 しかしこれは、事実だとしてもニヒリズムにすぎるだろう。自治体が共通の目標を掲げて、施策を点検し、改善するのであれば、暮らしやすい自治体にはなるだろう。それを信じる以外に手はない。そのことによって景気が回復し、税収が増えるのなら、結果として交付税が減るのは歓迎だ。それも信じるしかない。
 別の観点もあるだろう。もし、交付税の増加に結びつかないのだとするのなら、こんな忙しいとき、地方創生なんていいや、と取り組まない自治体が続出したとしたら。そうした消極的自治体は、総務省から冷たい視線を注がれる。なぜなら、総務省は、自治体が待ったなしで地方創生に取り組む、そのためには経費(財政需要)を見込まなければならない。その額1兆円といって、財務省を説き伏せた。実際がそうでなかったとしたら、財務省は予算執行調査によって、そんなお金は必要なかったといって、逆襲してくるだろう。今、交付税総額は自治体の基礎的行政サービスの財源保障に足りない。足りない分は国と自治体が折半して負担している。足りない分が減るのであれば、財務省は大歓迎だ。こんなにまっとうな財政需要があるのだと主張する総務省と、そんなものありはしないと疑う財務省の戦いの最前線に自治体は立たされてしまっているのだ。
 地方交付税をめぐる事情から得られる教訓は、真に住民のために役に立つ施策であるのなら、無理をしてでも、効率的に行おう、というものである。しかしこれは当たり前すぎて教訓にも何にもならないが。
 では、急いで、特徴。

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