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明日の論点

2015.04.10 政策研究

〈地方財政〉平成27年度地方財政計画と地方創生

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公益財団法人地方自治総合研究所研究員 菅原敏夫

補正予算と交付金

 昨年12月14日の総選挙で、政府予算編成は、2010年、2013年のときと同じように遅れて始まった。今回の場合は例年に比べて約3週間の遅れだった。自治体の予算編成に与える影響はどうだろうか。通常ならばほとんど関係ない。それに今年は統一地方選を控えていて、多くのところで予算議会も前倒しで進む。年末には予算案を固めて予算議会に臨む。議員も4年間の総決算の意を込めて準備に怠りなく、のはずだった。
 異変は年末の仕事納めの後にやってきた。12月27日土曜日、政府は、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定する。急に慌ただしさを増す。年が明けて1月9日、2014(平成26)年度補正予算が閣議決定される。この補正予算には自治体側が期待してやまなかった「自由度の高い交付金」が含まれていた。この日にはもう交付金の申請の説明会が自治体向けに開かれている。申請の条件を見て自治体はもう一度びっくりすることになる。その条件には、「人件費は助成の対象にしない」とある。確かに交付金を使って事業を行うためには人手は必要だが、純粋に交付金は事業費として支出すべきで、人件費の付け替えは認めない、というものだ。「自由度」は低下するし、どうやって仕事をこなせる職員を確保しろというのだ、という疑問は残るが、分からないわけではない。しかし次の項目には心底驚いた。「12月27日の経済対策の閣議決定後に地方公共団体の予算に計上された事業に限定する(新規性)」と書かれていたからである。
 多くの自治体で、2014年度最終補正予算案の編成はすでに終わっていた。印刷に回しているところさえあった。しかし交付金を得るためには、最終補正予算案の編成のやり直し、もうひとつの補正予算案の編成、今ある補正予算案の議会での同時補正などの方法を選び、決断する必要があった。新しい事業を起案している暇はもうほとんどない。ご親切にも説明会で示されたメニューから選ばざるを得ない、というのは致し方ない選択でもあったろう。
 この交付金事業、4,200億円、期待も大きかったし、地方創生への最初の大きな一歩、「明日の論点」の格好のテーマであったが、いきなり、「すでに終わった論点」に滑り落ちてしまった。とはいえ、このままでおくのはもったいない。「再来年度・2016年度」予算を見据えた地方創生を考えてみたい。この顚末でも分かるとおり、地方創生は、2015年度の課題であると同時に、2014年度補正予算プラス2015年度当初予算の課題、すなわち15か月をひとまとまりにして考えるべき課題なのだ。交付金は、2014年度補正予算で予算化する。基金には積まないが、交付金の実際の配分と執行は2015年度にずれ込むことは確実だ。

交付金の仕組み

 交付金の仕組みから見ておこう。

交付金の仕組み

 交付金のタイプは2つだ。地域消費喚起・生活支援型(2,500億円)と地方創生先行型(1,700億円)だ。地方創生先行型は基礎交付(1,400億円)と上乗せ交付(300億円)に分かれる。
 地域消費喚起・生活支援型には、以下のようなメニュー例が示されている。
 1 プレミアム付商品券(域内消費)
 2 ふるさと名物商品券・旅行券(域外消費) 
 3 低所得者等向け灯油等購入助成 
 4 低所得者等向け商品・サービス購入券 
 5 多子世帯支援策
 地方創生先行型には、以下のような例が示されている。
 1 「地方版総合戦略」の策定(必須)
 2 UIJターン助成
 3 地域しごと支援事業等
 4 創業支援・販路開拓
 5 観光振興・対内直接投資 
 6 多世代交流・多機能型ワンストップ拠点(小さな拠点) 
 7 少子化対策(地域消費喚起等型対応等を除く)
 地域消費喚起・生活支援型と地方創生先行型は区別されていて、プレミアム付商品券で地方創生を行うというつながりにはなっていない。地方創生先行型は文字どおり先行型で、本体はこれからなのだが、「地方版総合戦略」(交付金で策定助成あり)の策定が求められている。地方版総合戦略は遅くとも2015年度中、2015年度を初年度とする計画がよいとされているので、そうそうゆっくりはしていられない。
 ここまでは補正予算対応だ。これから先は2015年度予算が対応していくことになる。自治体の2月、3月議会の様子をヒアリングしていくと、当然のことながら補正予算対応の交付金事業は提案され、議論になっている。確かに、プレミアム付商品券の例は多いものの、そればかりでなく、子育て支援関連の施策も目につく。すぐに実施できるのは、第2子、3子以降の子どもの保育料の減免などだが、2015年度以降の交付金の財源が確保されているわけではないので、自治体としては、決心のしどころだ。対照的に2015年度当初予算では、地方創生の議論は低調だったように思う。当初予算編成のときには織り込んでいなかった事態が起こったのだから当然といえば当然だろう。「まち・ひと・しごと」という言葉が出てこない当初予算も多い。地方創生は依然として2015年度が始まってから本格的に取り組む課題として残っている。議論はこれからだ。一方、新聞報道によれば、多くの首長、議員が地方創生は統一地方選の争点になると予想しており、議論の帰趨(きすう)もこれからだということだろう。補正予算についてはこのくらいにし、最後に1点だけ指摘して、2015年度地方財政計画の議論に移りたいと思う。
 最後に1点といったけれども、地方創生全体からいえば、最初の1点に位置するものである。「まち・ひと・しごと創生法」は昨年総選挙の直前、可決成立し、平成26年法律136号として公布された。第1条は例に漏れず、この法律の目的が示されている。苦心の跡を示すように、426字の息の長い1つの文章からなっており、その最初は、「この法律は、我が国における急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し」と始まっている。目的は明確だ。人口減少に歯止め、東京圏への集中是正である。どちらも難しい課題であることは論をまたない。こうした目的を掲げた法律はもちろん初めてだ。自治の観点からいえば、東京圏の自治体がこの目標をどうやって達成するのかに関心を寄せ続けたい。具体的に東京圏は10万人の社会減を求められているのだから。

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