地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

明日の論点

2015.03.10 政策研究

〈地方財政〉公会計はこう変わる!新地方公会計制度

LINEで送る

議会で何をチェックすべきか[財務書類編]

(1)財務書類の活用のために
 議会が自治体の公会計改革をチェックするための別の手法として、議員が財務書類をどうチェックしたらよいのかを検証する。自治体職員もそうであるが、地方議員も、どうも公会計改革というか複式簿記は分かりづらいということで敬遠しているようである。できれば簿記の知識を得るのが望ましく、これからの時代は財務書類のチェックができる議員が求められるのではないかと思う。
 ここで、総務省より示された「財務書類等活用の手引き」の中で特に重要だと思うポイントを解説する。この手引きの中では財務書類の分かりやすい公表や議会審議活性化が求められている。自治体の財務状況に関する説明責任は議会に対しても果たさなければならない。現行制度においては、自治体の長は、歳入歳出決算を議会の認定に付する際、会計管理者から提出された歳入歳出決算の事項別明細書、実質収支に関する調書、財産に関する調書及び通常は財政当局で作成する主要な施策の成果を説明する書類を併せて提出することとされている(地方自治法233条及び同施行令166条)。
 統一基準に基づく決算に係る財務書類については監査に付し議会に提出する義務化(法制化)はなされなかった。
 しかし、大阪府のように、大阪府財政運営基本条例25条により独自に財務諸表の作成及び公表を規定している先進市もある。
 財務書類活用の目的は、人口減少が進展する中、限られた財源を「賢く使う」ことにつなげることである。そして議会審議の活性化に最初に資するのは、マクロ的な視点からの活用である。そのためには財政指標を理解することが必要となる。
 例えば、現在、多くの自治体の公共施設等の老朽化対策が大きな課題であるのに、決算統計や財政健全化の指標からは資産の老朽化の程度を把握できない。しかし、固定資産台帳を整備することで分かる資産の老朽化の程度の指標である老朽化比率は有用な指標となる。従来の財政状況の把握は「負債」つまり「借金」の状況に注目しており、資産の状況には注目していなかったのである。公共施設が多い=資産が多いことが財政破綻につながるとは想定していなかったのではないか? と考えられる。
 総務省から示された老朽化比率の指標を含む財務分析の視点からの指標は、表のとおりである。
 新地方公会計制度の導入により、今後は他市比較や経年比較ができるようになるなど、自治体の財政状況のチェック機能が向上することになる。

表:財務分析の視点:財務分析の視点

(2)財務書類の早期公表に向けて
 統一基準による財務書類に基づく様々な指標を分析し、それを地方議会や決算委員会で活用することが望まれる。そのためには、財務書類等の作成及び公表の早期化が求められており、決算年度の翌会計年度のおおむね8月末までに作成し、その検証を経て、9月末までに公表することが望ましい。ここで、習志野市でも議員の方から「決算委員会において財務書類の提出が可能であるか?」との早期公表の要望を受けた一般質問の答弁要旨を参考として以下紹介する。

答弁:「決算委員会において財務書類の提出が可能であるかについてお答えします。
 財務書類については、監査委員による審査や議会への報告が義務付けられているものではございませんが、議会の監視機能の向上に資するものであると考えられます。現行においては、当該年度の財務書類については翌年度の3月末に年次財務報告書、いわゆるアニュアルレポートとして作成している状況です。これは、さらに詳細な公会計情報を網羅した公会計白書という形で整理していることに起因しております。
 その他、予算編成に活用ができていない理由と同様に出納整理期間や期末一括仕訳などの要因がありますが、来年度以降については決算委員会の時期までに議員の皆様に参考資料として公会計情報の提供をしていきたいと考えております。
 具体的には、連結対象団体全てではありませんが、一般会計や特別会計について会計ごとの『貸借対照表』と『行政コスト計算書』、さらに一般会計については貸借対照表のうち有形固定資産の行政目的別、いわゆる款ごとの状況、及び行政コストについても款別の明細を参考資料として提出をしたいと考えております。
 将来的には事業別や施設別を含めた詳細な財務書類の情報を決算委員会に提出ができるよう体制整備を含めて検討をしていきたいと考えております。」

 なお、この質問の中で「決算委員会において提出」ということに関しては庁内の合意や議会との調整がなければ難しいとの意見があったが、「決算委員会の時期までに議員の皆様に提供」と表現を変えることにより庁内の合意を得た経緯もある。

明日の論点をチェック
□ 新しい公会計制度の内容をチェック
□ 自分の自治体の新公会計導入進捗をチェック
□ 財務書類を分析するための視点をチェック

おわりに

 自治体が他の自治体との比較も含め、自らの財政状況をより的確に把握し、継続して財政健全化に取り組むために、従来の決算統計や地方公共団体の財政の健全化に関する法律(地方財政健全化法)などの指標に加えて、新たに公会計の指標を組み合わせることで一層分かりやすい財政情報が得られる。このことから、財務書類から得られる公会計情報は自治体経営のための羅針盤のようなものであるといえる。議員サイドからもこの羅針盤を大いに活用をしていただければと思う。本論が議員の皆様の参考となれば幸いである。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2024年 7 6

東京・谷中の天王寺五重塔が全焼(昭和32年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る