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2015.03.10 政策研究

〈地方財政〉公会計はこう変わる!新地方公会計制度

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議会で何をチェックすべきか[一般質問編]

 新地方公会計制度下の統一基準による財務書類の作成までの過程において、議会の一般質問などで、各自治体の取組進捗状況をチェックすることが必要である。ここでは、主なチェック項目を検証する。

(1)固定資産台帳の整備状況
 統一基準による財務書類の作成の最大のハードルは、固定資産台帳の整備である。平成24年度決算の状況について全国1,789団体に対して行った調査結果が総務省から公表されている。この調査によると、固定資産台帳整備済みの団体が320団体(17.9%)、整備中が638団体(35.7%)、未整備が831団体(46.5%)となっている。また、モデル別の財務書類の作成状況では、固定資産台帳の整備が前提となる「基準モデル」の団体が273団体(15.3%)である。このことから「総務省方式改訂モデル」の団体では固定資産台帳の整備が進んでいないことが分かる。

(2)庁内体制について
 固定資産台帳の整備が進んでいない自治体は、体制整備がとれていない自治体ということになる。総務省から推進のために4つの例が示されているので、それぞれの自治体はどのパターンで体制整備をしていくのかを早めに選択すべきである。
① 委員会・ワーキンググループ等を設置し、推進するパターン
  財政課・管財担当課・会計課などから選抜した職員による委員会・ワーキンググループ等を設置する。
② 主担当課が会議を開催し、推進するパターン
  主担当課(財政課等)が課長職などの庁内連絡会議を設置し、その下に係長職などの作業部会を設置する。庁内連絡会議の意思決定機関は庁議など部長職の会議とする。
③ 財政課や会計課等が中心となり推進するパターン
  財政課や会計課等が全体総括して、各課に調査を指示して行う。
④ 財政課等と管財担当課と共同で推進するパターン
  財政課や会計課等が総括するが、管財担当課に土地や建物などの固定資産台帳の整備の一部を任せる方法。
 どのような体制をとるかはそれぞれの自治体の事情によると思うが、筆者の所属する習志野市では、公会計改革タスクフォース組織を設置する①のパターンで実施した。どのパターンであっても、成功するための重要なポイントは次のとおりである。

固定資産台帳整備の成功のための3つのポイント
① 権限が付与(辞令交付など)された職員がリーダーシップを発揮すること。
② 各課が協力体制をとり、また意識が高いことで、各課の作業内容の周知が徹底できること。
③ 整備時期を明確にし、計画性を持って組織を挙げて取組をする。

 筆者は体制整備なくして固定資産台帳の整備はないと考える。

(3)人材育成について
 前述した体制整備には、組織体制の強化に加え、人材育成が含まれる。
 総務省の「今後の新地方公会計の推進に関する研究会中間とりまとめ」(平成25年8月)で、今後の実務上の課題と対応の方向性として「地方公会計の推進に貢献する人材の育成・教育」が挙げられている。
 具体的には、説明責任の履行や行財政の効率化・適正化につながる適切な財務書類を作成するため、さらには財務書類を分析してマネジメントに活用するためには人材育成が重要であり、継続的な教育が必要ということである。
 また、複式簿記の知識・ノウハウを有する職員が育成されることにより、地方公営企業を含めた自治体内部の会計処理体制の充実・強化を図ることが可能になる。このように公会計改革を推進するための人材が必要であることは、疑いの余地がないことだ。
 習志野市ではどのように人材を発掘したのか、以下要件を紹介する。

習志野市が求めた公会計担当者
① 簿記資格2級以上の有資格者
 ➡複式簿記の知識が不可欠
② 財政(決算)担当経験者
 ➡現行の決算の理解が不可欠
③ 公会計係長の配置
 ➡係としての対応が必要であるため
 ➡会計課に公会計担当の係を設置

 公会計を担う人材がまだいない自治体では、今後人材を発掘し、育てていく必要がある。このことは議員側からも当局にアプローチしてもらいたい。

(4)実践!一般質問
 次に、新地方公会計についての議会での一般質問の想定問答を例にとり、論点を改めて確認していきたいと思う。

質問:「総務省より要請されている統一基準による財務書類の作成には固定資産台帳の整備が不可欠であるが、その進捗状況を伺う。」
答弁:「固定資産台帳の整備状況についてお答えします。総務省からは平成27年度から平成29年度までの3年間で統一的な基準による財務書類の作成が求められております。議員ご指摘のように、統一的な基準の財務書類を作成するに当たり固定資産台帳の整備は不可欠であります。この固定資産台帳の整備には特別交付税措置の財政支援が予定されており、この内容についても確認をしているところです。さらに、人材育成の観点からも総務省が自治体職員向けの研修を実施する予定ですので、積極的に職員を派遣するとともに今後の職員配置を含めての体制整備についても検討中であります。また、新基準による財務書類の作成にはシステムの整備が不可欠であります。このシステムについては総務省が標準的なソフトウェアを平成27年度のできる限り早い時期に無償で提供するとのこととなっており、このことについての情報について注視していくとともに、近隣自治体の動向や県の指導を受けながら対応をしていきたいと考えております。」

 以上のような答弁が一般的なものになることが想定される。要するに、「検討はしているが主体的にやっていない」との答弁である。そこで、議員がさらに踏み込んだ再質問を行うことにより、公会計改革の推進につながるポイントを以下紹介する。

公会計改革推進のための再質問のポイント
① 固定資産台帳の整備は総務省からの要請でするのか➡自治体経営のためには自治体自らが固定資産台帳を作成するという心構えが必要ではないのか?
② 体制整備は総務省から例が示されているのであるから、どのような体制で行うのかを準備しておくべきではないのか?
③ 人材育成には、まず人材の発掘を行うことが必要ではないか? 育った人材は自治体の財産になる視点はあるのか?

 以上の①~③の視点を入れた再質問が効果的ではないかと考える。

この記事の著者

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