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2015.03.10 政策研究

〈地方財政〉公会計はこう変わる!新地方公会計制度

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はじめに

 平成27年1月23日総務省より「統一的な基準による地方公会計マニュアル」が公表された。この中で地方議会での活用についても言及されている。本論では、今回の新地方公会計制度について、背景や意義などの解説をするとともに、財務書類等をマニュアルどおりに作成して終わりではなく、自治体の行財政改革のためにどう活用すべきか、議会がチェック機能を果たすためには何ができるかについて述べたい。
 なお、文中意見に関する部分は筆者の個人的見解であることをあらかじめご了解いただきたい。

現行の会計制度の問題点とその見直しの経緯

 現在の国や自治体の会計制度は、現金の収支に基づいて、取引及び事象を認識する現金主義であり、記帳方法としては、経済活動の取引を一面的に記録する単式簿記という方法である。このことは、予算に従った適切な執行を行い、その説明責任を果たす点では適した制度であるが、問題点を抱えている。
 問題点の1つ目はストック(資産・負債)情報が欠如していることである。この会計処理においては、現金のフロー(移動)は厳格に記録されるが、現金以外の資産や負債の情報が別々の基準や台帳で管理されているので、相互の関連性を持てず、網羅的に把握できない。このことにより総合的な財務情報の説明、つまり、アカウンタビリティが欠如することになる。
 2つ目は非現金情報、例えば固定資産の取得原価を耐用年数にわたって費用配分する減価償却費や費用を見積り計上する引当金等が計上されない。そのため、行政サービスに要した事業費のフルコストを把握するというマネジメントが欠如している。
 このような問題点を解決するために、平成18年6月に「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律47号)、いわゆる行政改革推進法が制定された。この行政改革推進法の62条2項に「政府は、地方公共団体に対し、(中略)企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備に関し必要な情報の提供、助言その他の協力を行うものとする」との規定が盛り込まれた。
 行政改革推進法を実施するに当たり、平成18年8月に総務省より具体的な指針が示され、この中で、原則として国の作成基準に準拠し、発生主義・複式簿記の導入を図り、平成20年度決算について関連団体を含む連結ベースの財務書類4表「貸借対照表」、「行政コスト計算書」、「資金収支計算書」、「純資産変動計算書」の作成が求められた。
 財務書類の作成方法としては「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」の2つが示された。「基準モデル」とは固定資産台帳を整備し、複式簿記により財務書類を作成するモデルである。一方、「総務省方式改訂モデル」は、毎年各自治体で作成されている決算統計の情報を活用して財務書類を作成することが容認されたモデルである。当時、多くの自治体が作成時の負担の少ない「総務省方式改訂モデル」を選択した。
 ここで、平成26年5月23日付総務大臣通知を抜粋して紹介する。
 「多くの地方公共団体において既存の決算統計データを活用した簡便な作成方式である総務省方式改訂モデルが採用されており、本格的な複式簿記を導入していないことから、事業別や施設別の分析ができていないのではないか、また、公共施設等のマネジメントにも資する固定資産台帳の整備が十分でないのではないか、といった課題があります。そのため『今後の新地方公会計の推進に関する研究会』を開催して議論を進めてきましたが、平成26年4月30日に報告書を取りまとめております。この中で、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした財務書類の作成に関する統一的な基準を示したところです。今後、平成27年1月頃までに具体的なマニュアルを作成した上で、原則として平成27年度から平成29年度までの3年間で全ての地方公共団体において統一的な基準による財務書類等を作成するよう要請する予定であります。」
 この総務大臣通知により、統一的な基準による地方公会計の整備促進のためには、まず、固定資産台帳の整備から準備することとなった。

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