東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之
はじめに
自治体は単体で存在しているのではなく、多数の自治体が存在し(多数性=連載第27回~第31回)、また、複数のレベルからなる多層制である(多層性・補完性=連載第6回~第9回)。自治体が住民に対してサービスを提供するときには、他の自治体や国との関係が必須である。また、住民から見れば、自身の居住する自治体として、広域自治体と基礎的自治体の双方との関係が発生するし、国とも関係する。それだけでなく、居住しない自治体との関係も登場する。
国は、全国政府(national government)又は中央政府(central government)と、講学的に呼ばれる(1)。自治体は、都市政府(municipal government)・地域政府(regional government)又は地方政府(local government)・自治政府(self-government)などと呼ばれる。その点からすれば、国・自治体を一括して「政府(government)」と呼べる(2)。そこで、国と自治体との関係、自治体と自治体との関係を総称して、政府間関係(intergovernmental relations:IGR)とすることができる。自治体の世界は、孤立した単独の閉鎖的な一元的な領域ではなく、他の自治体や国との関係が不可避的に発生する多元的な世界である。
連邦制と単一主権制
一般的には、統治機構のあり方については、三権分立制や大統領制・議院内閣制などが著名であるが、それに加えて、連邦制と単一主権制という分類・類型論がある(3)。そして、単一主権制の中に、(地方/都市)自治制が存在することが普通である。ただし、自治制が、その他の社会団体・中間団体の自治と同質であって、統治機構ではなく民間側・社会側の存在なのか、あくまで、統治機構の側の存在なのかという理解の相違はあり得る(4)。通常、自治体も強制力に基づいて、租税などの法的義務を課せる存在なので、統治機構の一部と理解される。
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