元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
本稿では、地方分権の「メリットと必要性」や政策実現の「困難性と方策」、及びこれらに関する事項について再考します。そして、その上で政策過程において、これらの言葉を発するときの「自治体議員の発言に期待される含意と政策」について考えたいと思います。
「分権」「集権」のメリット・デメリット、求められる適正な「分権・集権」
本連載第1稿では、日本が分権型社会に向かっていることを確認しました。本稿では、まず地方分権の「分権」「集権」のメリット・デメリットを改めて整理したいと思います。ここにいう「分権」とは自治体が決め、「集権」とは国が決めるということです。表1からは、現在の日本においては分権のメリットが大きいと見ることができます。
出典:筆者作成
表1 「分権」「集権」のメリット・デメリット
ただし、分権のメリットを活かすためには、政策資源(権限・人員・財源等)の国から自治体への移転と併せて、分権型社会の実現に対する自治体関係者等(市民、自治体政府〈議員・首長・職員〉、国〈政治家・職員〉)の価値観・信念・行動様式の確立が求められます。もし、まだ確立していないのであれば、確立に向けての転換が必要なことを忘れてはならないでしょう。
戦後日本は、2000年の分権改革前は、先駆的な取組みはあったものの、「憲法は変わった、法律は中途半端に変わった、関係者の精神構造(価値観・信念)と行動様式はあまり変わらなかった」といえるかもしれません。2000年の分権改革後は、「憲法が変わった、法律もかなり変わった」といえるでしょう。しかし「関係者の精神構造(価値観・信念)と行動様式が変わった」と自信を持っていうことができるでしょか。これからは、「憲法が変わった、法律も変わった、関係者の精神構造(価値観・信念)と行動様式も変わった」と明確にいいうることが期待されます。
そして、「分権」「集権」が機能的な状況であるためには、「分権」「集権」の割合が適正であることが求められます。なぜなら、「分権」と「集権」は、オール・オア・ナッシング(all-or-nothing)ではなく、両者ともに必要だからです。
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