社会構想大学院大学コミュニケーション・デザイン研究科特任教授 牧瀬 稔
かわさきジャズ実行委員会/「音楽のまち・かわさき」推進協議会、公益財団法人川崎市文化財団事業課担当係長 前田明子
静岡市市長公室東京事務所主査 松木喜伯
1 本連載の振り返り
本連載は今回が最終回になる。簡単に、過去の連載を振り返る。
第1回は、キーワードから日本におけるまちづくりの歴史を概観した。まちづくりキーワードとは、住民運動、市民参加、市民参画、協働、そして共創である。住民運動から協働までの時代は、日本の人口は増加していた。時代により、自治体と住民等の対立や調和の動きがあるものの、基本的には人口増加を前提としたまちづくりが展開されてきた。
ところが、近年は人口減少に入っている。まちづくりのパラダイムシフトが起きたといえる。人口減少を前提としたまちづくりは、自治体だけではなく、多様な主体(民間企業や大学、NPO法人等)と連携・協力しなくてはいけない。
人口減少時代のまちづくりを充実させていく一視点として、本連載では「活動人口」という概念を提起した。活動人口とは、「地域に対する誇りや自負心を持ち、地域づくりにいきいきと活動する者」と定義できる。なお、「者」の中には、自然人だけではなく、法人や任意団体等も含まれる。本連載は、活動人口の利点や創出方法について詳述してきた。
本連載第2・3回は、持続発展可能なまちづくりを実現するための「活動人口」の事例を紹介した。取り上げた事例は、流山市、鎌倉市、徳島県神山町である。また、活動人口を創出するに当たり、参考事例から明らかにした4STEPを提起している。なお、第2・3回の表題は「持続可能」ではなく「持続発展可能」としている。「発展」の2文字を意図的に入れている。活動人口の存在は、地域にイノベーションをもたらす可能性が高い。すなわち、そこには地域としての「発展性」が見いだされる。そこで持続発展可能と称している。
第4・5回は「音楽」に焦点を当てた。音楽には合意形成しやすい要素がある。音楽はまちづくりを進める際に活用できる有力なコンテンツである。音楽を活用し、活動人口を創出した事例として、いなべ市、福井県、島根県美郷町を紹介した。また、各事例から明らかになった必要なプロセスを4段階で例示した。音楽のまちづくりにより活動人口の創出、ひいては持続発展可能なまちづくりを進めていくために「共奏モデル」を提示している。
当たり前だが、各自治体(各地域)は画一ではない。各自治体により前提条件や事情が異なる。その結果、合意形成していく要素(コンテンツ)が違ってくる。本連載では「音楽」をキラーコンテンツとして、まちづくりの議論を進めた。しかし、地域によっては音楽より「スポーツ」が望ましい場合がある。あるいは「祭り」かもしれない。第4・5回で説明した「音楽のまちづくり」の事例は、スポーツをはじめ、別の要素にも活用できる。
以上の連載を振り返り、今回は、改めて「活動人口」に焦点を絞る。活動人口を創出していくための視点を10のキーワードとして紹介し、本連載を締めくくる。
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