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2023.03.10 政策研究

第15回 政策(議会基本条例)と議会・議員(下)

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元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄

(本稿は前回(「第14回 政策(議会基本条例)と議会・議員(上)」)から続く)

議会基本条例がアジェンダに乗る理由、アジェンダと議会・議員

 議会改革と議会基本条例の制定・改正・運用は関連している。議会改革には議会基本条例の制定・改正・運用が求められ、議会基本条例の制定・改正・運用には議会改革が求められる。議会改革と議会基本条例は表裏一体のものといえる。では、議会基本条例の制定・改正・運用は政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)の中で、どのように位置付けられることが必要であろうか。
 前回(第14回)は、議会基本条例について「ここまでで進んだこと」、「いまだ(2023年2月時点)課題として残っていること」を提示したが、議会基本条例の制定・改正・運用が行われるためには、そのことがアジェンダ(課題抽出)に位置付けられることが必須条件となる。伊藤修一郎がいうように、アジェンダは、会議で用いる場合は、会議次第や議事日程のことを指すが(伊藤 2015:50)、議会基本条例に関する議案が議事日程に乗らなければ、その案が成立することはないからである。
 議会基本条例に関する議案をアジェンダに位置付けるためには、「他の議案等の課題」と比べて、議会基本条例に関する議案の必要性が高いという認識を、少なくとも議会内(議員間)において共有していることが必要となる。「他の議案等の課題」が優先順位の高い課題としてアジェンダに位置付けられている場合には、議会基本条例案がアジェンダに乗らないこともある。なお、アジェンダに乗らない理由は、時間を含めた政策資源が限られていることから生じる場合と、政策資源があるにもかかわらず課題をアジェンダに乗せたくないので位置付けないようにする操作(「非決定」(伊藤 2015:63))から生じる場合がある。
 また、アジェンダ設定能力を磨くためには、議会内外の「知」を利用することが求められる。議会内外の「知」とは、市民・行政・専門家・ジャーナリスト等のあらゆる「知」である(図1参照)。
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出典:筆者作成
図1 アジェンダ設定能力における現状維持と能力向上
(「知」の利用がない場合、「知」の利用がある場合)



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田中富雄(元・大和大学政治経済学部教授)

この記事の著者

田中富雄(元・大和大学政治経済学部教授)

1955年生まれ。三郷市(埼玉県)出身。三郷市職員を経て、2017年4月から大和大学政治経済学部准教授、2019年4月から同教授。2020年3月病気のため大和大学を退職。龍谷大学大学院政策学研究科博士後期課程修了。博士(政策学)。専門・研究分野は、基礎自治体の統制/基礎自治体の経営。特に、自治体政府(議会・首長)、自治基本条例、総合計画、公共政策、まちづくりに関心がある。主な論文は、「議会における「議論の可能性」-三郷市自治基本条例を事例として」(村田和代編『これからの話し合いを考えよう (シリーズ 話し合い学をつくる 3)』、ひつじ書房、2020年)、「自治体計画に対する議会の制御」(廣瀬克哉編『自治体議会改革の固有性と普遍性』、法政大学出版局、2018年)、「自治基本条例の成立と展開」(龍谷大学博士学位申請論文、2014年)。

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