元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
(本稿は前回(「第14回 政策(議会基本条例)と議会・議員(上)」)から続く)
議会基本条例がアジェンダに乗る理由、アジェンダと議会・議員
議会改革と議会基本条例の制定・改正・運用は関連している。議会改革には議会基本条例の制定・改正・運用が求められ、議会基本条例の制定・改正・運用には議会改革が求められる。議会改革と議会基本条例は表裏一体のものといえる。では、議会基本条例の制定・改正・運用は政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)の中で、どのように位置付けられることが必要であろうか。
前回(第14回)は、議会基本条例について「ここまでで進んだこと」、「いまだ(2023年2月時点)課題として残っていること」を提示したが、議会基本条例の制定・改正・運用が行われるためには、そのことがアジェンダ(課題抽出)に位置付けられることが必須条件となる。伊藤修一郎がいうように、アジェンダは、会議で用いる場合は、会議次第や議事日程のことを指すが(伊藤 2015:50)、議会基本条例に関する議案が議事日程に乗らなければ、その案が成立することはないからである。
議会基本条例に関する議案をアジェンダに位置付けるためには、「他の議案等の課題」と比べて、議会基本条例に関する議案の必要性が高いという認識を、少なくとも議会内(議員間)において共有していることが必要となる。「他の議案等の課題」が優先順位の高い課題としてアジェンダに位置付けられている場合には、議会基本条例案がアジェンダに乗らないこともある。なお、アジェンダに乗らない理由は、時間を含めた政策資源が限られていることから生じる場合と、政策資源があるにもかかわらず課題をアジェンダに乗せたくないので位置付けないようにする操作(「非決定」(伊藤 2015:63))から生じる場合がある。
また、アジェンダ設定能力を磨くためには、議会内外の「知」を利用することが求められる。議会内外の「知」とは、市民・行政・専門家・ジャーナリスト等のあらゆる「知」である(図1参照)。
出典:筆者作成
図1 アジェンダ設定能力における現状維持と能力向上
(「知」の利用がない場合、「知」の利用がある場合)
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