元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
1 議会内における「争点化・議論」と「信頼」
本連載の最終稿では、自治体議会(議員)の市民や他のアクターとの信頼関係について概観してみよう。
社会は多くの人々で成り立っている。そして、人の価値観は様々である。置かれた立場によって見解が異なることもある。そのため、物事の決定には議論が必要となる。多様な市民の信託を受けた議員には、極力「謬(びゅう)(=間違い)」を避けるためにも議論が求められる。
ときには、新型コロナウイルス対応のように、新しい課題が出現することもある。新型コロナウイルス対応では、休校、店舗休業(時間短縮)、イベント中止(入場制限)等について議論が分かれた。市民間ではもちろんのこと、府省間、自治体と府省、自治体政府間、議会と行政、政府と専門家、専門家間で議論が分かれた。また、新型コロナウイルスの特徴が見えてくるに従って、あるいは感染者数や入院者数・自宅療養者数等の増減によっても議論の方向性が変化している。
議論は見解が分かれている事柄や議論の方向性が変化している事柄で争点化すると効果がある。議会内で争点化するには、議論するための議会内(議員間)での「信頼」が必要となる。もちろん、「信頼」には市民や他のアクターへの「公開」が前提となる。また、文章化することで、議論の内容を明確化(確定)することができるし、その場にいなかった人も後から内容を確認することができる。そして、その内容を踏まえて議論することができる。文章化すること(=公文書の作成・保存・公開)は、信頼の前提となる(図1参照)。
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