早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員 佐藤 淳
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地方議会の変化の兆しと「デモテック」
2020年からの新型コロナウイルスとの闘いが長期戦の様相を呈している。非常時には、平時に強く働く現状を維持しようと考えがちな「現状維持バイアス」が弱まり、向かうべき方向への動きが立ち上がり、時間軸が一気に進む。企業のテレワーク、学校のオンライン授業、病院の遠隔診療等、新型コロナの影響により、日本の至るところでそうした実験的な取組みが生まれ、これまで無理だといわれていたことが実現している。地方議会のオンライン化の動きもその流れである。
早稲田大学マニフェスト研究所(以下「マニ研」という)が実施する「議会改革度調査2020」(回答数1,404議会/回答率78.5%)によると、「端末の所有元と利用形態」の設問において、タブレット端末を貸出し・支給している議会が441議会(32.2%)と3割にまで増えている。「デジタル・オンラインの対応状況について」の設問において、委員会をオンラインで開いた議会は18議会(1.3%)、その他会議をオンラインで開いた議会は159議会(11.6%)と約1割の議会がオンライン会議に挑戦している。また、「議会の会議以外の場で、住民が議会参画する機会や場」の設問において、オンライン会議による意見交換の場を設定した議会は14議会(1.0%)となっている。オンラインを活用した住民とのコミュニケーションを実施している議会はまだまだ少ないが、コロナ禍の中、地方議会には確実に変化の兆しが生まれている。
マニ研では、新型コロナの問題が発生する以前から、ICTやAIの技術、テクノロジーを活用した多様な主体の「参加」と「集合知」により、民主主義のアップデートができないかについての研究と運動の模索を始めていた。そしてこの運動を、ICTやAIを駆使して革新的、破壊的な金融商品、サービスを生み出す「フィンテック(finance×technology)」に倣い、「デモテック(democracy×technology)」と命名していた。「デモテック」には、選挙、政治、行政のあり方を変える大きな可能性がある。
茨城県取手市議会では、2020年6月15日、マニ研、一般社団法人地域経営推進センター、東京インタープレイ株式会社、取手市議会・同事務局の四者で、議会の更なるICT化導入による新しい民主主義の手法構築に向けて、産官学の連携協定を結び、「デモテック宣言」を行った。また、9月4日には「デモテック戦略特別委員会」の設置を全会一致で可決し、ICTを活用した議会運営・活動、議員活動に関して調査研究を行っている。
今回は、取手市議会が挑戦している、会議のオンライン化等、「デモテック」への取組みを事例に、アフターコロナ(コロナ後)を見据えた議会のあり方を考えてみたい。取手市議会は、マニ研が実施する「議会改革度調査2020」の議会改革度総合ランキングで全国1位の議会である。
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