慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
連載を始めるに当たって
地域の共同体・統治団体である地方自治体の自己決定の表現ともいえる自治立法の拡充・活性化の必要性がいわれるようになって久しい。
この点、1990年代の半ば以降進められてきた地方分権改革などを通じた法環境の変化に伴い、自治体の自己決定の余地が拡大し、自治体による取組みの差は大きいものの、以前と比べて自治立法の状況はそれなりに変わってきているといえるだろう。
しかしながら、条例の制定主体である議会の存在感は、なお小さいままである。
もちろん、議会の側も、何もせずに手をこまねいて見ていたわけではない。
2000年代に入ると、積極的に議会改革や条例制定に取り組む議会が現れるようになり、それが徐々に各地の自治体に広がってきている。ただ、そこでは、理想が掲げられ、様々な取組みが行われてはいるものの、それが、必ずしも具体的な成果や議会に対する好意的な評価へと結びついていないところがある。依然として、議会に対する住民の関心はあまり高くはないのが実情である。
その背景には、様々なことが複雑に絡んでいるといえそうだが、そもそも、自治体議会の立ち位置や役割そのものについて、十分には見定まっていないところがあり、議論の混乱なども見られる。しばしば耳にするようになった二元代表制という言葉も、意味の変質を伴いながら独り歩きをし、いつのまにか議会改革の旗印の一つとされてしまったところがある。しかし、議会の本来的な性格や機能に目を向けることなく、やみくもに、二元代表制を掲げて長との対抗ということから議会の役割や改革を強調するだけでは、十分な成果を上げ、また、それを持続的なものとしていくことは難しいのではないだろうか。議会主導による条例の制定についても、しかりである。
ここでは、以上のことを踏まえ、議会改革の動向などに留意しつつ、自治立法における議会・議員の役割を見据えながら、議会の位置付け・役割・あり方などについて、改めて考えてみることとしたい。
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