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2019.03.25 議会運営

二元代表制の調整制度としての 「再議」の運用の実態とその課題(1)~「再議」運用の全体的な傾向を把握する~

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常磐大学准教授 吉田勉

1 はじめに~問題の所在 

 長と議会の二元代表制による自治体の意思決定に関して、双方の対立時における調整制度としては、議会の不信任議決と長のそれに対する処置(地方自治法(以下「法」という)178条)、長の専決処分(法179条・180条)、議会の議決に対する長の再議(法176条・177条)とがある。
 その中で、議会の議決に対して改めて議決し直しを求める措置として長に認められているのが再議制度である。これには、その議決の結果に関して長に異議があるときに長の任意の判断で行使される一般的再議(任意的再議)と、議会の越権・違法な議決等に対して長が行使を義務付けられる特別的再議(義務的再議)とがある。
 再議制度の成り立ちとしては、「旧憲法下で、本来政治の主体の官吏が、客体にすぎない住民の代表たる議会を信用せず、その行動の監督をし、予期しない方向へ進まないよう是正措置を確保したもの」と評されるほど、いわば、長の議会に対する不信感に端を発した制度として構築されたものといえる。
 再議は、地方自治法制定当時(昭和22年)は、特別的拒否権だけであったが、翌年の法改正により一般的拒否権が導入された。この際の提案理由としては、長は住民に対して直接責任を負い、その意思を行政に実現しなければならないが、議会との意思疎隔の場合、議会には条例・予算の議決で長の執行を制限できるが、長には違法議決、収支執行不能等の場合の再議しか認められておらず、消極的な抵抗しかできないことが挙げられていた。そして、アメリカの大統領制を参酌し、長に重要事項への拒否権を付与して、議会との正常な均衡関係を図るとする理由が重視され、反対意見もある中、それを押し切って導入された経緯があるとされる
 本稿では、2つの再議制度のうち、長と議会の政策的判断が衝突した場合に、その解決を図るための制度ともいえる一般的再議を考察の対象とするものである。以下、双方を区別する必要がない場合には、一般的再議を単に再議と呼ぶこととする。
 一般的再議制度の条文構成は、図1のとおりである。議会の議決に対して、長において異議がある場合には、長は議会にその理由を示して、改めて審議を求めるというもので、議長も採決に加わった上で条例又は予算の議決の場合は出席議員の3分の2以上にて再可決されると議決が確定し、逆にそれに満たない場合は一度可決された議案が不成立、すなわち廃案になるというものである。条例・予算以外の場合は、再可決要件は過半数であるが、特に重要な議決事件である条例・予算に関しては、議会の過半数の多数派の意向が実現しないことにもなる、長に優位な拒否権といえる異例の制度といえよう。

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吉田勉(常磐大学准教授)

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