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2018.06.25 議会運営

自治体議会における運営手続──条例と規則の切り分けを

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東京大学名誉教授 大森彌

地方分権改革で規則による権利義務規制は廃止になった

 すでに旧聞に属するが、2000(平成12)年4月、いわゆる地方分権一括法の施行に伴い、改正地方自治法によって、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」(14条2項)ことになった。これは、機関委任事務制度の廃止に伴い、個別の法令により権利義務規制(義務を課し又は権利を制限すること)を自治体の執行機関が定める規則に委任している実態を改革するものであった。すべての省庁はこれに応じた。ただし、警察庁は、「機動性の確保」を主な理由にして、道路交通法などにある規則委任を見直さなかった。警察の権利義務規制権限に関しては、条例制定という形で都道府県の知事及び議会の権限は及ばないのである。

対応が遅れている標準会議規則

 実は、自治体議会が制定している「議会規則」が、住民の権利義務規制は規則ではなく条例によらなければならないという原則に反する内容を温存している。
 もともと、1947(昭和22)年10月、内務省行政課長が都道府県総務部長宛に「都道府県議会会議規則準則」及び「常任委員会及び特別委員会の条例の準則」を出し、これを参考にして、各議会は会議規則と委員会条例を制定し運用することになった。1956(昭和31)年の地方自治法改正に伴い、都道府県、市、町村の全国議長会が、それぞれに標準会議規則、標準委員会条例を作成し、この「標準」が各議会で一般化した。問題は、その内容がほぼ同一であることだけでなく、「標準」が地方分権改革にきちんと対応していない面を持っていたことである。
 自治体議会は、その任務をどのように運営の基準や手続によって遂行するかは、各自治体議会が自主的に決め得る内部事項であるはずである。しかし、自治体議会の手続ルールに関しては、地方自治法による直接規制があり、それを受けて条例に委任している事項があり、それ以外は議会の会議規則で定める、という三層構造になっている。
 地方自治法120条は、「普通地方公共団体の議会は、会議規則を設けなければならない」と、会議規則の制定を義務付けている。会議規則は議会の内部事項の規定であるから、条例ではなく規則で扱っていることに問題がないように見える。しかし、その会議規則の中に、住民の権利義務規制を含む項目が埋め込まれているのである。

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大森彌(東京大学名誉教授)

この記事の著者

大森彌(東京大学名誉教授)

東京大学名誉教授 1940年生まれ。東京大学大学院修了、法学博士。1984年東京大学教養学部教授、1996年東京大学大学院総合文化研究科教授、同年同研究科長・教養学部長、2000年東京大学定年退官、千葉大学法学部教授、東京大学名誉教授、2005年千葉大学定年退官。地方分権推進委員会専門委員(くらしづくり部会長)、日本行政学会理事長、自治体学会代表運営委員、川崎市行財政改革委員会会長、富山県行政改革推進会議会長代理、都道府県議長会都道府県議会制度研究会座長、内閣府独立行政法人評価委員会委員長等を歴任。社会保障審議会会長(介護給付費分科会会長)、地域活性化センター全国地域リーダー養成塾塾長、NPO地域ケア政策ネットワーク代表理事などを務める。著書に、『人口厳守時代を生き抜く自治体』(第一法規、2017年)、『自治体の長とそれを支える人びと』(第一法規、2016年)、『自治体職員再論』(ぎょうせい、2015年)、『政権交代と自治の潮流』(第一法規、2011年)、『変化に挑戦する自治体』(第一法規、2008年)、『官のシステム』(東京大学出版会、2006年)ほか。

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