東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之
はじめに
前回まで、総務省に設置された地方議会・議員に関する研究会がまとめた『地方議会・議員に関する研究会の報告書』(2017年7月)の検討をしてきた。このところ、総務省では、ほぼ切れ目なく毎年のように地方議会に関する研究を行っている。本連載で、何回かに分けて検討を続けているうちに、新たな報告書が出てしまうという状態であった。前回までにようやく『地方議会・議員に関する研究会の報告書』の評論を終えたところである。今年も、そうこうするうちに、次の研究会である「町村議会のあり方に関する研究会」(以下「研究会」という)の報告書が準備されている。そこで、今回から、上記研究会の報告書を検討しようと考える次第である。
当初、2018年3月上旬までには、研究会による報告書が完成・公表されるであろうと思われていた。しかし、本連載の締切(3月上旬)を過ぎても、3月6日開催の第7回研究会を終えても、最終報告書が公表されていない(1)。こうして、7回目の3.11である本日においても同様である(2)。そこで、今回は手続問題として研究会の過程を検討することとし、実体問題である研究会の報告書の評論は、次回以降に持ち越すことにしよう。
開催目的の方向性
研究会は2017年7月27日に第1回会合が開催された。開催要綱によれば、「議員のなり手不足等により特に町村議会運営における課題が指摘されていることにかんがみ、小規模な地方公共団体における幅広い人材の確保、町村総会のより弾力的な運用方策の有無その他議会のあり方に係る事項などについて具体的に検討を行うため」に開催するという。
もともと、高知県大川村が、議員のなり手不足の問題などから、議会を廃止して、町村総会を設置するという構想を示し、それに対して、国が対応を求められたという経緯がある。それを反映して、「町村総会のより弾力的な運用方策の有無」ということで、町村総会も議題に設定されている。
もっとも、「有無」というように、「ゼロ回答」の結論を暗示している。むしろ、当初から、硬直化した現行議会と同じような弾力的ではない町村総会の運用方策については、「無」を前提として、地方議会を「弾力化」する方策を検討する意図が示されているといえよう。つまり、公式的でしっかりした重厚長大の議会ではなく、非公式でゆるゆるとした軽薄短小の議会の運用方策を目指すということであろう。
加えて、「幅広い人材の確保」が課題のようである。もっとも、この論点は、累次の研究会報告書でも議論されてきたが、決め手がないというのが実態である。大川村でも、町村総会というアイデアが出てきたのは、現実的に指折り固有名詞を挙げて考えていくと、議員候補が足りず、議員定数が満たせないという危機感があったからである。
町村総会の最大の難点は、数人の議員すらなり手がいない中で、町村総会という、全ての有権者が総会という会合の「なり手」になることを期待するという根本矛盾があることである。有権者の大半が議員になりたがるという事態ならば、町村総会は「なり手」がある。しかし、議員数人(大川村議会は定数6)すら確保できない以上、ましてや、町村総会の実質的な出席者という「なり手」など確保できるわけはないのである。つまり、町村総会は、名目的には議会に代わる存在であるが、実態としては「無」となる。町村総会という議会廃止が、現実的な運用方策になり得ないという意味で、開催要綱が、あらかじめ「町村総会の運用方策は無」と決めたことは、妥当だったといえよう。
結論からいえば、開催要綱では、町村議会をゆるい軽薄短小な存在にしようということが、検討課題なのである。
構成員の二重性
いわゆる研究会は、学識者のみで構成することが普通である。所管局課の官僚のブレーンストーミング的な役割を期待されることが多いからである。これが、具体的な制度設計や、関係団体の意向確認や利害調整などが重要となる、いわゆる審議会となると、学識者だけでは不充分で、関係団体、報道人、実務家、政治家などが加えられることもある。上記研究会は、その名称のとおり、いわゆる研究会であって、前者タイプの構成であり、学者(大学教授)のみ8人の純然としたものである。
もっとも、研究会・審議会ともに共通したことであるが、構成員だけが発言し、構成員同士だけで議論するのではない。むしろ、実態は異なる。構成員は、事務局である所管局課の官僚と質疑応答をするのが普通である。事務局の支援を受けた座長の司会進行の下、構成員が事務局官僚と会話を行うのが基本である。つまり、事務局官僚が、発話ないし対話のハブ(中心)の役割となる。当然、発言時間も事務局官僚が多くなる。これに加えて会議冒頭で事務局が、事務局提出の資料を延々と説明すれば、さらに事務局官僚の発言時間は多くなる。
つまり、何がいいたいかというと、こうした研究会の実質の構成員は、いわゆる正式構成員だけではないということである。むしろ、事務局官僚こそが、真の構成員である。研究会の開催要綱によれば、「研究会の庶務は総務省自治行政局行政課において処理する」とある。研究会庶務(事務局)とは、つまり所管局課である。要するに、自治行政局関係者も実質の構成員である。とはいえ、この真の構成員は、開催要綱では記載されない。これは、議事緑を見るしかない。
例えば、「第1回議事概要」を見れば、「幹事」として、自治行政局長、大臣官房審議官、住民制度課長、市町村課長、行政経営支援室長が出席している。また、「事務局」として、行政課長、行政企画官、行政課課長補佐が出席している。つまり、これらのメンバーが、属人的か宛職的かはともかく、真の構成員なのである。開催要綱には「幹事」は明示されていないが、庶務(行政課)関係者であることには違いないから、特段の違和感はないかもしれない。もっとも、それならば、議事概要にも「事務局」の一員として記載すればよいようにも思われる。「幹事」とは、事務局以上で、公開の構成員未満の、真の構成員というところであろう。
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