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2017.12.11 議会改革

今あらためて議選監査委員を考える(下)

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人口30万人を超える自治体議会議員 木田弥

パネルディスカッション「今あらためて議選監査委員を考える」

廣瀬克哉法政大学教授:3人の方からの貴重なご報告をいただいた。では、各パネリストとの議論に進みたいと思う。まず、Kさん、Iさんに、議員であることと、議選監査委員であることの矛盾をどのような場面で感じられるのか、その場合、どのように心がけていたのかをお伺いしたい。

K氏(人口30万人を超える自治体議会議員):議員という立場を考慮して議選監査委員を務めようとすると、嫌われてしまうので、監査委員として割り切ろうと心がけてきた。むしろ、監査委員会に入り込んで漸進的に、例えば、監査報告書の形式などを変えていくことを目指した。公表された内容が、他の議員の一般質問や議案質疑につながっていくように工夫を凝らしてきた。

I氏(東京都下の市議会議長):監査の仕事に従事しているときには、自分は議員であるという立場、思いはひとまず置いていた。例えば、監査のテーマによっては、議会からすれば、突っ込みどころのあるものもある。しかし、そういった場合は、あくまでも議会で議論をするべきであると割り切っていた。また、議場や委員会室での議論と違い、基本的には監査委員の場合は、非公開の議論であり、党派や会派の立場を超えて、自分が人間としてどう考えるかということで、判断や発言をしようと決めていた。したがって、目の前の課題について、自分の立ち位置や支援してくださる方々がどう考えるかを忖度(そんたく)して、判断を誤ることがあってはならないと考えていた。この点は、議選監査委員だけでなく、識見に基づく監査委員であっても同様ではないか。

X氏(元監査事務局課長):私の経験からすれば、我が市の議選監査委員は立場をわきまえて役所の期待するレベルで仕事をこなされていたし、原理的な対立が生じないように、事務局も配慮してきた。Kさんのお話をお聞きして、行政の内部情報と議員の持っている政治的な情報を総合するとよい監査活動が行えることも分かったが、場合によっては行政の基盤を揺るがすような事態を招く可能性もあるように思う。そのような議選監査委員の就任は、行政職員としては、あまり歓迎できない。

江藤俊昭山梨学院大学法学部教授:Kさん、Iさんのお話をお聞きすると、地方自治法198条の3第1項が公正不偏、2項が守秘義務を規定しているが、この2つの条項を広くとらえ、厳格に守っている印象だ。
 私は、二元的代表制がしっかりと機能すれば、議会からも監査が可能と考えている。監査委員としての仕事をしっかり行える議員を選出できるシステムを構築することがポイントではないか。また、守秘義務の基準はあるのか、職を辞しても守秘義務が残るのか。議選監査委員を務めたKさんや特定の会派は、その経験に基づき鋭い質問ができる。でも、これではだめではないのか。基準が明らかになっていないのであれば、議選監査委員を務めた人が知り得たことを議会で話し、問題になれば、そこでようやく基準ができてくるのではないか。議選監査委員の経験を議会全体のものにしていくためには、報告書の充実だけでなく、監査の際に用意される膨大な資料を公開してもかまわないのではないか。
 このことに関連して、地方自治法121条で議会は、執行機関の方々からの説明を要求できる。現状で、この制度を活用している事例はどのくらいあったのか。この点も含めて考えていく必要がありそうだ。

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この記事の著者

木田弥(人口30万人を超える自治体議会議員)

人口30万人を超える自治体議会の議員として活動中。

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