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2017.11.10 政策研究

今あらためて議選監査委員を考える(中)

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人口30万人を超える自治体議会議員 木田弥

パネルディスカッション「今あらためて議選監査委員を考える」

 前回紹介した江藤俊昭先生の基調講演を受けて、パネルディスカッションが行われた。今回は、各パネリストからの報告と、パネリスト間の議論を報告する。

廣瀬克哉法政大学教授:地方自治法改正後の議選監査委員制度は2通りの選択がある。あらためて議選監査委員制度について、この機会に考えてほしい。その上で各自治体において結論を出していただきたい。
 議選監査、さらにいえば監査にどのような役割が期待できるのか。江藤先生の基調講演を受けて、まずは3人のパネリストから現場の実情を踏まえての問題提起をしていただく。

X氏(元監査事務局課長):私は、監査事務局の課長を6年間務めた。実は、こういう場所でお話しするのは気が進まなかった。私の配布資料のタイトルは「議選監査委員、この悩ましきもの」である。
 本日参加されている行政職員の方の多くは、議員や監査とは、できれば関わりたくないと思っていらっしゃるはず。そもそも、昭和の時代、利益分配政治の時代に機能低下させられていたのが行政の監査機能。1995年の阪神・淡路大震災時に某県の監査事務局が九州にカラ出張した記録が残っているほどだ。そういった時代から、地方分権改革などを経て、監査は本来の機能を取り戻しつつあるというのが現在。
 議選監査委員は、できるだけ来てくれない方がありがたい存在。実際、できるだけ来なくていいように運用もされている。普段はだだっ広い監査委員室に常勤監査委員のみが常駐しているのが実態。そういう事情がちゃんと分かっている議選監査委員は、監査がないときに立ち寄るような野暮(やぼ)なことはしない。たまに来て、決裁書に「はい、分かった」とハンコを押してくれる。
 そういうこともあってか、議選監査委員の任期は短い。本市では2人ともに1年であり、4年で8人の議員が議選監査を経験することになる。そのため、割と中小会派にも議選監査委員就任のチャンスが回ってくる。特に、4年に一度は、市政運営に対して厳しい姿勢をとっておられる公党の方が議選監査委員に就任されるため、監査事務局もそのときばかりは戦々恐々となる。市長と政治的に対立している会派からの議選監査委員に対して、市役所職員が部下としてその議選監査委員にお仕えすることができるのか。これは相当に困難である。原理的に、議会議員の身分を持ちながら、執行機関に入るという点が、強烈に摩擦を起こすこととなる。そのような構造的課題を抱えたまま、議選監査委員がどうやったら機能するのか不思議である。
 6年間の監査事務局での経験に照らしても、議選監査委員のおかげで良い仕事ができた、という経験はほとんどなかった。ちょうど、住民監査請求が提出された時期に、市長と政治的に対立している会派の方が議選監査委員をしており、また、その請求内容も政治的な要素を含んでいたため、その議選監査委員が合議(ごうぎ)を了承してくれず、監査事務局は説得にとても苦労した。結局、合議が成立せず、両論併記となった。
 今日は、いい仕事をされている議選監査委員の方が来ていらっしゃるということなので、そのお話をお聞きするのを非常に楽しみにして来た。行政職員の視点からだと、あまり建設的な話にならないので、ひとまずこれくらいにさせていただく。

廣瀬:今日これからお話しされる議選監査委員のIさんと、Kさんの話だけ聞いていても、議選監査については平均的な実態とはかい離した印象を与えるため、あえてXさんに参加していただいた。おそらく大多数の自治体は、Xさんがお話しされた状況に近いといってよいだろう。では次に、Iさんにお話しいただく。

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この記事の著者

木田弥(人口30万人を超える自治体議会議員)

人口30万人を超える自治体議会の議員として活動中。

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