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2017.05.12 政策研究

第1回 百条調査はじめの一歩

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弁護士 太田雅幸

1 はじめに

 首長部局のある課が保存期間経過前の公文書を大量に廃棄したが、一定の事実を隠すためだったという疑いがある――。A市議会は、事実の解明及び再発防止策の設計をしたいと考え、百条調査権を発動することになりました。調査を担当する特別委員会が、公文書を溶解処理事業者に引き渡した職員を証人として尋問することを決定し、出席を求めました。
 委員長が証人に対し、「宣誓を行った証人が虚偽の陳述を行った場合には、3か月以上5年以下の禁錮に処せられることがあるので、注意されたい」と偽証の制裁の告知をして、尋問を開始しました。

委員長 今回、文書を破棄したのは、どうしてか。
証 人 書庫の収納の問題です。
委員長 書庫の収納というのは、文書を保管するスペースが厳しいということか。
証 人 ……。ということだったと思います。
委員長 書庫が満杯だ、だから文書の廃棄を検討するようにという指示が庁内にされたのか。
証 人 ……。そこは、ちょっと覚えていません。
委員長 特定の課に対してのみ、文書の廃棄が指示されることはあるのか。
証 人 あるかもしれません。よく分かりません。
委員長 書庫の収納状況や過去における文書の廃棄状況は、調査すれば判明することだ。書庫の保管スペースが厳しいから文書を廃棄したという証言は、それで、本当に大丈夫なのか。
証 人 少しはっきりしません。
委員長 それは、文書の廃棄に別の理由があったかもしれないということですか。
証 人 よく思い出せません。
委員長 書庫の収納の問題という証言は撤回する意味ですか。
証 人 すみません、そうなります。よく考えると、理由が曖昧です。
委員長 では、聞き方を変えます。文書の廃棄は、誰から指示されたのかな。

 上記のように、証人尋問等の権限を付与され、証人が虚偽の証言をしたと考えれば、偽証を認定して検察庁に告発まで行うのが百条調査権です。
 最近の事例でいえば、議員の政務活動費の使途に関する疑義を調査した市川市議会の百条委員会、破綻した市立病院の経営の指定管理を受けた団体が締結した土地取得に関する念書に関し市の関与を調査した銚子市の百条委員会、築地市場の豊洲移転の経緯の調査を行う東京都の百条委員会、首長の市政をめぐる複数の事象を調査した横須賀市の百条委員会を例示することができますが、多くの議会において百条調査権の発動の事例はないと思われます。そこで、およそ3回の連載予定で、そのような百条調査の未経験議会の関係者の方々を主な対象として、百条調査について道案内をすることとしましょう。

この記事の著者

太田雅幸(弁護士)

1961年生まれ。東京大学法学部卒業後、衆議院法制局に入局。20年にわたり、内閣委員会、地方行政委員会、財務金融委員会、商工委員会、厚生委員会などを担当し、法律案や修正案の作成に携わる。会員契約適正化法案、公職選挙法やNPO法などの改正案、年金改正法案や有事法案の修正案の作成に参画。この間、最高裁判所司法研修所で司法修習(49期)。2005年11月退職し、弁護士登録。東京都在住。

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