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2017.07.10 政策研究

第2回 百条調査権の課題

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弁護士 太田雅幸

1 調査の範囲――主として議会から付与された調査目的からの逸脱について

 第1回の説明において、「百条調査の対象は非常に広範であって、調査対象の設定の局面で、範囲を踏み出すことはあまり考えられないが、具体的な調査を行う委員会に権限を付与した後、委員会における調査活動において、調査事項を逸脱することがある」という趣旨のことを述べました。
 例えば、次のような事例を調査することになったとしましょう。

【事例1】
 市長と以前から交流のあった者(システム会社勤務)が選考を経て、市の任期付職員(情報化推進担当)として採用され、その後、任期更新年限の前年に同種業務を行う任期付でない管理職職員を公募することとなって、競争試験を経て採用された。しかし、選考や試験のあり方に少し疑問があり、この過程にいわゆる情実が介在したのではないかということが問題となった。

 職員の人事に関する調査は、「当該普通地方公共団体の事務……に関する調査」(地方自治法100条1項)であり、問題ありません。一個の事実だけで上記の人事が違法又は不当なものと断罪できることはまれですから、百条委員会はいくつかの間接事実の積み重ねによって上記人事の問題点を浮かび上がらせようとすることでしょう。
 例えば、その人物と市長との交流の経緯・密度、市長に対する政治献金の存否・額、当該市において情報化推進を担当する任期付職員が必要であったのかどうか、当該人物の採用を検討した動機(経歴・業績、市で求める人材が有すべき能力)、選考項目、採用条件(採用時の等級等)、任期付職員としての業績・仕事ぶり、任期付でない管理職が内部登用でなく公募とされた経緯、競争試験の内容(任期中職員として当該業務を担当していた当該人物に有利な内容のものであったのかどうか、口頭試問の面接官の範囲)等です。任期付職員としての業績等というのは、採用問題から少し遠いようですが、仕事ぶりに難があれば、遡って任期付職員としての選考のずさんさ、管理職としての採用の不透明さの間接事実になります。したがって、それは調査目的をはみ出したものだ、とはならないでしょう。
 

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この記事の著者

太田雅幸(弁護士)

1961年生まれ。東京大学法学部卒業後、衆議院法制局に入局。20年にわたり、内閣委員会、地方行政委員会、財務金融委員会、商工委員会、厚生委員会などを担当し、法律案や修正案の作成に携わる。会員契約適正化法案、公職選挙法やNPO法などの改正案、年金改正法案や有事法案の修正案の作成に参画。この間、最高裁判所司法研修所で司法修習(49期)。2005年11月退職し、弁護士登録。東京都在住。

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