東京大学名誉教授 大森彌
2016年3月8日の名古屋市議会の本会議において、議員の報酬年額(議員報酬+期末手当)を800万円から655万円増額して1,455万円にする条例案が賛成多数(自民公3会派)で可決された。これをめぐって、河村市長との対立が続いている。今回は、この条例改正に関し考察したい。
2011年の議員報酬の特例に関する条例
名古屋市議会の議員の議員報酬の特例に関する条例(2011年4月28日制定、同年5月1日施行、以下「特例条例」という)は、1条で、「議長、副議長及び議員の議員報酬の月額は、名古屋市議会の議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例((中略)以下「報酬条例」という。)第1条の規定にかかわらず、当分の間、500,000円とする」と規定している。報酬条例1条は、「市議会議員には、次の各号に掲げる区分により議員報酬を支給する。(1) 議長 月額 1,225,000円 (2) 副議長 月額 1,078,000円 (3) 議員 月額 990,000円」となっている。特例によって、本則より、議長は月額72万5,000円、副議長は57万8,000円、議員は49万円、それぞれ減額していた。議長、副議長への役職加算はせず、一律に月額50万円としている。
自治体は、その議会議員には「議員報酬を支給しなければならない」が、その額をいくらにするかは、各自治体の条例に委ねられている。ところが、議員報酬のほかに、この報酬額を基準にして「期末手当」が支給されている。議員に対する期末手当は、地方自治法上は、203条3項で「普通地方公共団体は、条例で、その議会の議員に対し、期末手当を支給することができる」と規定している。「支給しなければならない」のではなく「支給することができる」となっているから、議員報酬と違って支給しないこともできる。しかし、ほとんどの自治体で「期末手当」を支給している。
名古屋市の報酬条例では、「期末手当は、6月1日及び12月1日(以下これらの日を「基準日」という。)にそれぞれ在職する議長、副議長及び議員に支給する」と規定し(6条)、「期末手当の額は、期末手当基礎額に、次項に定める割合を乗じて得た額に、基準日以前6箇月以内の期間におけるその者の市議会議員としての在職期間の次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た額とする」としている。期末手当基礎額を在職期間6か月は100分の100、5か月以上6か月未満は100分の80、3か月以上5か月未満は100分の60、3か月未満は100分の30とし、この基礎額に乗じる割合を各年度ごとの合計が100分の310になるよう、6月に100分の145を、12月に100分の165を支給するとしている。期末手当基礎額は、それぞれその基準日現在において議長、副議長及び議員が受けるべき議員報酬及び議員報酬に100分の45を乗じて得た額の合計額となっている。
ところが、特例条例2条では、「6月及び12月に議長、副議長及び議員に支給する期末手当の額は、当分の間、それぞれ1,000,000円に」するとしている。期末手当は一律に年額200万円となっている。それらをまとめて表にすると以下のようになる。
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