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2015.08.10 選挙

公職選挙法等の一部を改正する法律の解説 ~選挙権年齢引下げの経緯と課題

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衆議院憲法審査会事務局主査 中谷幸司

Ⅰ 成立までの経緯(表1参照)

 1 憲法改正国民投票法制定
 平成19年5月に制定された日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正国民投票法」という)は、憲法改正国民投票の投票権年齢を18歳以上とした。その上で、立法政策上、憲法改正国民投票の投票権年齢、選挙権年齢及び成年年齢等を18歳以上に合わせていく必要があるとの考えの下、法施行(平成22年5月18日)までの3年間にそのための法制上の措置を講ずることを附則に定めた上で、選挙権年齢及び成年年齢の引下げは行わず、20歳以上のままとした(憲法改正国民投票法附則3条1項)。なお、この法制上の措置が講ぜられ、選挙権年齢等が「18歳以上」に引き下げられるまでの間は、憲法改正国民投票の投票権年齢も20歳以上とする、いわゆる「ストッパー」が設けられていた(同条2項)。
 しかし、引下げ期限の平成22年5月18日を過ぎても、これらの年齢引下げは行われなかったため、憲法改正国民投票の投票権年齢が18歳以上なのか20歳以上なのか確定しない状態となっていた。

表1 選挙権年齢の推移表1 選挙権年齢の推移

 2 憲法改正国民投票法改正
 平成26年6月に公布された日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律(以下「憲法改正国民投票法改正法」という)においては、憲法改正国民投票の投票権年齢は、公職選挙法の選挙権年齢と民法の成年年齢との間の「リンク」を設けないことによりストッパーを外し、4年間の経過期間を設けた上で、その期間の経過後(平成30年6月21日)から自動的に18歳以上とすることとした(憲法改正国民投票法改正法附則2項)。その際、ストッパーを外された選挙権年齢、成年年齢等の引下げについては、締切りこそ明示していないものの、「速やかに」検討し法制上の措置を講ずることが定められた(同法附則3項)。
 これにより、憲法改正国民投票の投票権年齢は「4年間は20歳以上、5年目から18歳以上」と確定するとともに、選挙権年齢等の引下げにも早急に着手することとされた。特に、その中でも「参政権グループ」である選挙権年齢についてはできるだけ早く憲法改正国民投票の投票権年齢と一致させるべきとの観点から、改正法施行後2年以内に18歳以上に引き下げることを目指して各党間でプロジェクトチームを設置することが提出会派の間で合意されていた。

 3 公職選挙法等改正案提出
 上記の合意に基づき、憲法改正国民投票法改正法の成立後直ちに「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」が立ち上げられ、参加した政党間で選挙権年齢引下げに係る検討が行われた。この検討を受けて、昨年11月、選挙権年齢等の引下げを定める公職選挙法等改正案が衆議院に提出されたが、衆議院の解散に伴い廃案となった。
 そこで、解散総選挙に基づく新たな会派構成の下、今国会に入り、再度「選挙権年齢に関するプロジェクトチーム」を開催し、自由民主党、民主党、維新の党、公明党、次世代の党、生活の党と山本太郎となかまたちの六会派及び野間健君の共同で、昨秋と同内容の公職選挙法等改正案が衆議院に提出された(3月5日提出。衆法第5号)。この法案は、6月2日に衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会で可決、同月4日衆議院本会議で可決・参議院に送付、同月15日に参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会で可決、同月17日に参議院本会議で可決・成立し、同月19日に「公職選挙法等の一部を改正する法律」として公布された(平成27年法律第43号。以下「本法」という)。

Ⅱ 改正の背景

 1 海外のすう勢
 国立国会図書館の調査によれば、191か国中176か国、世界の約90%の国で18歳以下(16歳、17歳を含む)の者に選挙権年齢が付与されている。

 2 選挙権年齢引下げの意義と効果
 本法による選挙権年齢の引下げの結果、約240万人が新たに選挙権を得る見込みである。
 選挙権年齢の引下げの意義や効果については、すでに憲法改正国民投票法制定時の審議において、18歳や19歳の若者は自らの考え方を持っており、物事を十分に判断できる力がある旨の指摘がなされていた。さらに憲法改正国民投票法改正法制定時の審議において、若年層に対する政治教育としての意義がある旨の指摘もなされていた。
 今般の法案審議においては、法案提出者から、選挙権年齢の引下げの意義について、選挙権と憲法改正国民投票の投票権は同じ参政権の行使であり年齢を合わせることがふさわしいとの説明や若年層の声を政治、政策に反映できるようにするとの説明がなされた。また、選挙権年齢の引下げの効果について、法案提出者から、若年層の政治参加により民主主義の土台がさらに強いものとなることを期待する旨の説明や民主主義の発展と若者の政治離れの解消を期待する旨の説明がなされた。

Ⅲ 法律の概要、施行日等(図1参照)

 1 選挙権年齢等の「18歳以上」への引下げ関係
 (1)選挙権年齢の「18歳以上」への引下げ(1条から4条まで)

 本法は、①公職選挙法、②地方自治法、③漁業法及び④農業委員会等に関する法律の4本の法律に規定する選挙権年齢等について、本則で、「18歳以上」への引下げの措置を講じている。これにより、①②国政選挙や地方選挙の選挙権年齢など、③海区漁業調整委員会の委員、そして④農業委員会の委員の選挙権年齢が引き下げられることになる。
 また、これらの法律を改正することにより、選挙権の具備を要求しているその他の法律の年齢条項も連動して引き下がることとなる(例えば最高裁裁判官国民審査の審査権年齢や地方公共団体の長や議員のリコールの請求者資格など)(表2参照)。

 (2)検察審査会法等の適用の特例(附則7条から10条まで)
 検察審査員、裁判員、民生委員及び人権擁護委員の就任年齢要件は、「選挙権年齢グループ」として位置づけられていることから、公職選挙法等の選挙権年齢が引き下げられれば、これらの就任年齢も自動的に「18歳以上」へと引き下がることになるはずであった(表2参照)。
 しかし、検察審査員等の職責の中身に鑑みれば、
① 18歳以上20歳未満の者は、少年法の少年として刑事処分より保護処分を優先した取扱いをされており、このような者を検察審査員や裁判員として刑事司法手続に関与させることは適当ではない。
② 18歳以上20歳未満の者は、民法上の成年に達しておらず、原則として親の同意なく1人で契約をすることができないこと等の親権に服することとされており、このような者に民生委員や人権擁護委員として地域住民の相談援助や人権相談の業務を委嘱することは適当ではない。
といった指摘が可能であり、就任年齢要件を選挙権年齢の引下げに直ちに連動させることには問題があることから、本法は、当分の間(民法の成年年齢と少年法の適用対象年齢が引き下げられるまでの間)の措置として、これらの年齢の引下げを行わないこととした。

図1 公職選挙法等の一部を改正する法律案 概要図1 公職選挙法等の一部を改正する法律案 概要

 (3)民法の成年年齢等の引下げに関する検討
 本法は、国は、憲法改正国民投票の投票権を有する者の年齢及び選挙権を有する者の年齢が18歳以上とされたことを踏まえ、選挙の公正その他の観点における18歳以上20歳未満の者と20歳以上の者との均衡等を勘案しつつ、民法、少年法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることとした。
 昨年6月の憲法改正国民投票法改正法の成立により、憲法改正国民投票の投票権年齢が平成30年6月から「18歳以上」に引き下げられることとなった。その際、選挙権年齢と民法の成年年齢とは社会における大人の年齢として共通の基盤を持つものであり、民法の成年年齢も同一の年齢とすることが望ましいとの意見もあった。しかし、まずは憲法改正国民投票の投票権年齢と同じ参政権グループである選挙権年齢を先行して、早急に「18歳以上」に引き下げてそろえることが立法政策上望ましいとの判断に基づき、民法や少年法は改正対象とされなかった。今後、民法の成年年齢や少年法の適用対象年齢をはじめとする年齢条項の引下げが検討されることとなる。

表2 選挙権年齢の引下げ関係の主な条項の規定振りの分類表2 選挙権年齢の引下げ関係の主な条項の規定振りの分類

 2 選挙犯罪等についての少年法の特例(附則5条)
 少年法は、可塑(かそ)性のある少年は指導や教育により更生させるべきであるとして「少年保護」を要請している。その一方で、公職選挙法は、選挙が選挙人の自由な意思の表明により行われることが大前提であることから、「選挙の公正確保」を要請している。
 少年法の適用対象年齢を20歳未満としたまま、選挙権年齢のみを「18歳以上」に引き下げた場合、少年法による少年保護の観点から20歳未満の者については原則保護処分とすることとされていることから、18歳、19歳の者による選挙犯罪に対する抑止効果が弱まり、「選挙の公正確保」の要請への悪影響が懸念される。したがって、「少年保護」の要請と「選挙の公正確保」の要請との均衡をどのようにして図るかが問題となるところ、本法においては、現行少年法における検察官送致の制度に「選挙の公正確保」の要請を取り込むことができないかが検討された結果、当分の間の措置として、以下の制度が設けられた。

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