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2015.08.10 仕事術

基礎から取り組む一般質問 〜「質」を支える3つのポイント〜

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〈「その質問によってまちはよくなるか」〉
 質問は問うのではなく「問い質す」行為である。「しっかり取り組んでいる」かどうかを尋ねるとき、「取組」そのものである「行政からみた施策・事業の現況」は一般質問でなくても確認することができる。「しっかり」しているかどうかは、問題状況に対しその「取組」が必要で効果的なものになっているかで判断される。したがって争点として提起するときには、それについて質問する議員自身の「判断」つまり評価が述べられることになる。
 単に「しっかり取り組んでいるか」「アレコレの事業を、しっかりやっています/これからもやっていきます」では施策や事業を紹介されたにとどまり、問い質していないのである。「しっかり取り組んでいるか」という問いが内包する「しっかり取り組んでいないのではないか」という問題提起は、実際の現況と、施策・事業、その背景にある制度と運用などから「しっかりしていない」論拠が示されることで、争点として具体化される。そうした争点がなければ、その質問をしてもまちがよくなることにはつながらないだろう。
 「残念な質問」の例として、個別要求にとどまる質問や、公表されている数字を確認するだけの質問が挙げられることがある。それは、そうした個別要求や数字を問うことが、「まちの課題」にどうつながっているかという争点を持たないためである。
 一般質問の前提として、まず、「その質問によってまちはよくなるか」、つまり政策課題をめぐる行政の取組について問い質すものになっているか、を確認し、その争点を施策・事業レベルで具体化して問題提起することが必要になろう。また、その「問い質し」が、監査機能を果たすものなのか政策提案機能を果たすものなのかによって、下準備は異なってくる。その点は次項で説明したい。

(2)データで強化する
〈質問を支える情報の重要性〉
 情報が質問にとってどれだけ重要かはいうまでもないが、中でも、情報を集めるというだけでなく、あふれる情報を選別するための技術の重要性が高まっているといえる。以下、政策をめぐる情報の3類型(5)ごとに、そのリソースをみてみたい。
 ひとつ目が①争点情報(6)である。いわゆるニュース的な〈状況情報〉、ウォッチャー型情報が挙げられる。議員活動、例えば市民相談などから得る情報は、まさにナマの争点情報といえる。新聞・雑誌報道、他自治体の動向などが挙げられる。インターネットでアクセスできる国会図書館の『調査と情報』は最近の政策論点をコンパクトにまとめたもので、一般質問に関連したタイトルがあれば目を通しておきたい。単なるコピーになっては意味がないが、各地の議会だよりを集め他自治体での一般質問を参考にすることもあり得よう。
 2つ目に②基礎情報(7)、調査・統計に基づく〈分析情報〉、自治体・国・公共機関の統計情報、地理・地勢・地図情報などである。狭義のデータといえばこれに当たる。IT化の進行によって、白書をはじめとした多くの情報がインターネット経由で手に入るようになった。政府統計のポータルサイトe-Stat都道府県広報などのコレクションがあるWARP名古屋大学の条例検索データベースeLenなどは便利だろう。国際的な統計には、OECDのデータベースがある。民間団体の出している白書など、オンラインで検索できない情報も確認しておきたい。
 我が自治体の調査・統計は特に重要だが、市町村の場合は都道府県に集積される基礎情報にも注目したい。同じ都道府県にある他地域との統計比較は重要であるし、市町村が集約していない情報がまとまっていることがある。
 政策課題をめぐる問題状況が「どのように深刻な、又はどのように良好な状態か」は、データに語らせることで説得力が生まれる。争点をめぐる基礎情報はできるだけ集めたい。
 3つ目、③専門情報(8)は政策開発に必要な専門的知見といえる〈技術情報〉、それぞれの分野の専門的知見である。専門書・論文、専門家などの分析、解説、調査報告などがある。専門的知見の活用は議会改革の中でもいわれているが、議員の争点提起にとっても重要な情報である。雑誌・論文情報のオンラインデータベースであるCiNiiには、主要な雑誌のほか大学紀要などのオンライン版へのリンクがあり、そのまま検索して読むことができるのである。議会図書室のレファレンス機能(9)は、議会の政策能力向上のために今後活性化が求められる項目のひとつといえるが、全国の図書館への文献調査依頼への回答事例集である「レファレンス協同データベース」は活用できるだろう。司書がいる議会図書室は残念ながら希少で、かなりの大規模自治体だが、一市民として公立図書館に文献調査依頼をかけることはもちろん可能である。三重県鳥羽市議会のように市立・県立図書館と連携する例もある。専門情報への窓口として、本棚としてだけではない図書館機能を使いたい。

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土山希美枝

この記事の著者

土山希美枝

龍谷大学政策学部教授 龍谷大学政策学部教授。法政大学大学院社会科学研究科政治学専攻〈博士課程修了〉博士(政治学)。専門分野は、公共政策、地方自治、日本政治。研究テーマは、変動する社会の構造と、政策、市民、政府の機能。著書に『高度成長期「都市政策」の政治過程』(日本評論社、2007年)、共著に『対話と議論で〈つなぎ・ひきだす〉ファシリテート能力育成ハンドブック』(公人の友社、2011年)、『「質問力」からはじめる自治体議会改革』(公人の友社、2012年)など。北海道芦別市生まれ。

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