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2015.06.10 政策研究

「日本で最も美しい村」連合10年のあゆみと今後の展望

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「日本で最も美しい村」連合理事 市原実

「日本で最も美しい村」連合とは

 特定非営利活動法人「日本で最も美しい村」連合(以下「美しい村連合」という)は2005年10月に設立され、今年で10周年を迎える。6月には「世界で最も美しい村連合会」(フランス、イタリア、ワロン(ベルギー)、ケベック(カナダ)、日本の5か国が加盟)の総会が北海道美瑛町で開催され、日本では初めての開催となる。また、10月には美しい村連合の10周年記念総会が長野県木曽町を中心に、長野県の美しい村連合加盟7町村が協力してホスト役を務め、全国から集まる参加者をお迎えすることになっている。
 美しい村連合は、一度失ったら二度と取り戻せない、日本の農山漁村の景観や環境・文化を守り、最も美しい村としての自立を目指すという運動を行ってきた。今や、日本中で、これまで守られてきた「美しさ」が消えようとしている。春先の田植え、秋の黄金色に輝く棚田、道路沿いに植えられた桜並木、壊されずに残された連なる古民家、五穀豊穣(ほうじょう)を願って村民を挙げて催す地域の祭りなど数限りない。いずれも、多くの人々が関わることでこれまで存続されてきた。しかし、過疎化が進み少子高齢化となり、人々が故郷から離れ人々の関わりが薄くなると田畑は元の荒れた山野に還(かえ)り、桜並木は枯れ、祭りの継続も難しくなってしまう。
 自然と人間の営みが、長い年月をかけてつくり上げた小さな、本当に美しい日本を、しっかりと未来に残したい──これが美しい村連合の基本理念にほかならない。

美しい村の春景色(長野県大鹿村)美しい村の春景色(長野県大鹿村)

美しい村連合の誕生

 美しい村連合の誕生には2人の人物が重要な役割を果たしている。カルビー株式会社の松尾雅彦元社長と北海道美瑛町の浜田哲町長である。
 松尾氏は1998年当時、カルビーがサッカーJリーグの立ち上げを支援していたことから、フランスで開催されるサッカー・ワールドカップの視察に出かけた際に、現地の日本人からの紹介で「フランスの最も美しい村」協会を知ることになった。ちょうどその頃、浜田氏から美しい農村風景を生かしたまちづくりができないかという相談を受けていた松尾氏は、カルビーの倉庫が美瑛町にあった関係から現地を訪れるたびに、作業の効率化のために耕地となっている畑が均平(農地を削り平らにすること)され美瑛町の美しい丘の風景が壊されていくことを危惧していた。北海道美瑛町は、なだらかな丘陵地帯で営まれている畑作の景観が「パッチワークの丘」と呼ばれ、多くの観光客が訪れるほど有名な場所である。松尾氏は、その美しい丘を守るためにこの「最も美しい村運動」が必要であると直感し、調査研究を進めて2002年にフランスへ飛んだ。「フランスの最も美しい村」協会の事務局長から話を聞き、実情を視察して日本への導入を決意。早速、帰国してから実現のために動き始めたのである。
 松尾氏から「フランスの最も美しい村」を訪れるよう勧められた浜田氏は、2003年に現地を視察。フランスとは歴史や文化が違う中で、どのように日本でこの運動を進めていけばよいのかをフランス協会会長とも話し合い、日本は日本独自のルールづくりと共感する仲間を募るようアドバイスを受け、この「最も美しい村運動」を日本において立ち上げることを決意した。
 浜田氏は帰国後、加盟町村の募集を開始したものの、当時は、いわゆる平成の大合併のさなかで小さな自治体はなかなか踏み切れず、加盟は思うように進まなかった。勧誘や説得が功を奏し、勇気ある7つの町村が立ち上げを決断した。北海道美瑛町と赤井川村、山形県大蔵村、長野県大鹿村、岐阜県白川村、徳島県上勝町、熊本県南小国町である。

丘陵地帯の畑作の景観が「パッチワークの丘」と呼ばれる(北海道美瑛町)丘陵地帯の畑作の景観が「パッチワークの丘」と呼ばれる(北海道美瑛町)

日本の原風景ともいうべき棚田の田植え(徳島県上勝町)日本の原風景ともいうべき棚田の田植え(徳島県上勝町)

 こうして2005年10月に、北海道美瑛町において設立総会を行い、美しい村連合は7つの町村からスタートした。2015年4月現在、美しい村連合に加盟する町村・地域は54となっている。

美しい村連合への加盟

 美しい村連合に加盟するためには一定の条件を満たす必要がある。人口1万人以下で、田舎として小さく輝くオンリーワンの特徴を持っており、地域資源を生かした活動が評価される。
 美しい村連合に加盟したからといって即効的に村に来訪者が増え、交流人口がプラスに転じたとか、町の特産品がブランド化して売上げが増えたというようなことは期待しにくい。美しい村連合に加盟したメリットは、加盟した村自らが生み出していくものであり、美しい村連合に加盟する際に、自分の村は「日本で最も美しい村である」と宣言をした上で、
① 「自分たちの地域が美しい地域づくりをする」というビジョンを住民や外部に対してメッセージとして発信する。
② 「私たちは、日本で最も美しい村連合に加盟しています」と打ち出し、加盟している他の村と同調してロゴマークを使用していく。
③ 美しい村連合が提供する相互に学び合う場(「首長による戦略会議」や「担当補佐役会議」を定期的に開催して、学習の場を設けている)に参加する。
ことが重要であろう。

「日本で最も美しい村」連合のロゴマーク「日本で最も美しい村」連合のロゴマーク

 美しい村連合に加盟している町村の中には、先進的な取組を行っているところも数多くある。例えば、地元完結型の観光ツーリズムの事例で有名な長崎県小値賀町、離島や山間地といった条件不利地であっても地場産品の販売に成功している島根県海士町、高知県馬路村のほか、積極的な移住施策をとり人口減少に歯止めをかけているところなどを手本として、加盟町村同士で学び合うことができることも大きな特徴である。

北塩原で行われた2014年の連合フェスティバルの様子北塩原で行われた2014年の連合フェスティバルの様子

美しい村連合が目指すもの

 美しい村連合は、加盟する町村それぞれが自立することを最終の目標としている。この目標の実現に向けて、それぞれの町村においては手法は異なるものの、実情に合った活動を展開している。美しい村連合としては、ひとつの手法を示して「集約する」という方法はとらない。異なる条件下でも取り組みやすい環境づくりと町村が取り組めるメニューの提供を行っていく。そのために「再生可能エネルギー開発」におけるドイツ及びオーストリアでの電力、熱のエネルギー自給の仕組みや事例などの調査や、「美味(おい)しい村開発」としていかに地元の食材を使用して付加価値を付けるか、「移住促進」では、加盟町村で成果を挙げているところで現地視察を兼ねた学習会を開催するなど、相互に学び合う機会を提供し、学習の場づくりを行っている。
 美しい村連合加盟の町村は、今後も厳しい条件下で存続していくためにビジョンづくりを進めていかなければならない。ビジョンとは、地域の経済的自立を目指すものである。しかも、ここ数年の短期的なものではなく、長期にわたって我が町や村の進む方向性を考え出すことである。都市と農山漁村の役割は違う。農山漁村は、都市の後塵(こうじん)を拝するものではなく、地域連携して機能と役割を分担し、地域資源の発掘と活用で、経済的自立を目指さなければならない。

伝統建築物のひとつである舟屋(京都府伊根町)伝統建築物のひとつである舟屋(京都府伊根町)

 美しい村連合はまだ揺籃(ようらん)期にある。加盟町村の数は増えたものの内容はまだ不十分であり、残念ながら美しさを磨く努力を怠っている地域も存在している。これらは5年ごとに行われる再審査において厳密な評価を受けることになると同時に、理念の共有を再確認し、ブランド価値を協働で上げていかなければならない。
 また、美しい村連合を運営していくための資金面も十分ではない。加盟町村や企業サポーターなどからの会費収入と寄附金に依存しているのが現状であり、加盟町村とともに成長しながら、運営体制を盤石なものとしていきたい。

今後の展望

 美しい村連合は、小さくても輝くオンリーワンを持つ農山村漁村の美しい景観や環境、文化を守り育てる活動を行って10年が経過した。美しい村連合の知名度はまだ決して高いとはいえないものの、「地方」が注目を集め始めてきており、ようやく美しい村連合の存在価値が理解されるときが来たと感じ、そして、きっと世に必要と思われるときが来ると確信している。
 地域創生の総合戦略や観光立国を目指すインバウンド政策など地域活性化に向けた様々な取組が展開される中、持続可能な地域社会づくりのモデルとなるよう加盟町村の自立と住民の自主的な活動によって、美しい景観や文化を未来につなぐために、地域と民間サポーターが一体となった活動をこれからも展開していかなければならない。
 1982年にフランスで始まった「最も美しい村運動」は、現在では、ヨーロッパから北米、アジアへと世界各地に運動の広がりを見せている。2003年に「世界で最も美しい村連合会」が設立され、2010年に日本が正式に加盟した。正加盟のフランス、イタリア、ベルギー、日本のほかに、準加盟のドイツ、韓国等から約30名が参加する「世界で最も美しい村連合会」の大会開催を契機に「日本で最も美しい村」連合の取組が世界へ発信されることを期待したい。

6月には、日本で初めての開催となる世界大会・総会が北海道美瑛町で行われる6月には、日本で初めての開催となる世界大会・総会が北海道美瑛町で行われる

「日本で最も美しい村」連合の活動内容
1 「日本で最も美しい村」の名称・ロゴマークの使用普及を図る。
2 この連合に加入した自治体の自立・発展のために、相互の経験や研究を共有する。
3 「日本で最も美しい村」の計画的な保全を行い、経済的価値を高め、社会的発展を促す。
4 地域の魅力を発信し、交流人口の増加による地域経済の発展を促進する。
5 世論を高めるための広報活動を行う。
 以上の活動のために、取り組んでいること
① 正会員(町村・地域協議会会員)の募集と審査、および5年経過時の再審査の実施
② 正会員(企業・団体)、準会員の募集と、会員向け種々サービス活動の実施
③ 定期総会・臨時総会を最高の議決機関として開催し、その基盤に立って理事会、およびその下部組織・資格委員会、事業委員会を開催
④ 町村の首長の参加による戦略会議、複数の県ごとのブロック会議を開催
⑤ 正会員(町村・協議会とスポンサー企業)間のコラボレーション(交流)の実施
⑥ 年間テーマに沿っての研修会の開催
⑦ 「世界で最も美しい村連合会」の活動に参加
⑧ 「公式ガイドブック」「季刊新聞・美しい村」の刊行
⑨ 広報活動としてのホームページ、Facebookの運営、など。

この記事の著者

市原実

「日本で最も美しい村」連合理事

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