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特集 地域を結びなおす公共交通

2022.11.10 政策研究

持続可能な地域づくりと地域公共交通の統合

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武蔵野大学工学部環境システム学科教授 白井信雄
 
  

1 持続可能な地域づくりの必要性と地域公共交通  

 グローバルとローカルな視点の両面から、持続可能な地域づくりが期待されている。グローバルな視点からは、例えば2050年のゼロカーボン社会の実現の先導役が地域に期待されている。脱炭素先行地域を全国に100か所ほど指定し、そのドミノ倒しにより、ボトムアップで2050年のゼロカーボン社会を実現していくという。
 ローカルな視点では、地域における少子高齢化と人口減少が進行し、商店街や農林水産業等の地域産業の衰退、行財政の逼迫(ひっぱく)と地域維持の困難化の問題が深刻である。また、脱炭素による緩和だけでは避けられない気候変動の影響は、脆弱(ぜいじゃく)化する地域において深刻であり、気候変動の適応策の強化も必要となってきている。
 こうした中、グローバルとローカルの危機への同時解決となる賢い対策が期待されている。省エネルギーや再生可能エネルギーに対する投資の呼び込みによる地域経済の活性化、コンパクトシティによる気候変動の緩和と高齢者福祉の充実等である。
 そして、地域公共交通の活性化もまたグローバルとローカルの危機への同時解決となる賢い対策である。例えば、地域公共交通は、(健全に活用されれば)1人当たりの二酸化炭素排出量が小さく、高齢者や子ども等の弱者が利用できる包摂性のある交通手段であるからである。

 

2 持続可能な地域づくりの四つの規範と地域公共交通  

 そもそも持続可能な地域づくりとは何か。持続可能な発展とは、環境・経済・社会の統合的発展という捉え方が一般的であるが、それだと社会面の捉え方が曖昧である。このため、筆者は、①主体の活力、②環境への配慮、③人への配慮(公正・公平)、④リスクへの備えといった四つの規範をすべて満たすことが持続可能な発展であり、それを地域という人と人のつながるまとまりで実現していくことが持続可能な地域づくりだと考えている(図1)。
 説明すると、地域の主体の活力がないと将来に向けた地域づくりはできないだろう。この際、主体の活力としては、経済面だけでなく、コミュニティの結びつきという社会面の活力であり、一人ひとりが身体的、精神的、社会的に元気であることも重要である。さらに、自己中心的な活力では不十分であり、環境と人という他者に配慮して、活力を高めること、災害を想定して備えておくことが必要である。
 この持続可能な発展の四つの規範を満たす地域づくりに、地域公共交通が役立つ。地域公共交通は、環境や人にやさしく、地域を元気にして、災害に備える基盤である。短期的な事業採算だけで見ると、地域交通事業者は経営的に厳しい存在である。しかし、グローバルとローカルの危機の同時解決、そして持続可能な地域づくりを目指すとき、地域公共交通ほど存在意義があり、役立つインフラはない。

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図1 持続可能な地域づくりの規範
 

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