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2021.11.10 政策研究

「ブラック校則」問題を考える視点 ─社会通念と保護者の意向─

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日本女子大学教職教育開発センター教授 坂田 仰

ブラック校則

 校則(生徒心得、生徒規則等)とは、学校に存在する多様な規則のうち、児童・生徒の生活に関わるものを指す。文部科学省によれば、「学校が教育目的を実現していく過程において、児童生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律」とされる(『生徒指導提要』参照)。ここで「ブラック校則」という場合、一般社会の常識からかけ離れた理不尽な校則、多くの児童・生徒が遵守する意味を見いだせない校則の総称といえる。「ブラック」という言葉が象徴するように、ブラック校則という呼び方には常にネガティブな評価が込められている。  
 仮にブラック校則であったとしても、それが有名無実化していれば笑い話にすることができる。しかし、校則の存在を盾にして実際に厳しい指導や管理的な教育が行われるとき、児童・生徒の日常生活は著しく不快なものにならざるを得ない。  
 校則に依拠した厳しい指導に対しては、国連において児童の権利条約が議論の俎上(そじょう)に載り、日本社会を子どもの権利ブームが席巻した1980年代半ばから1990年代半ばにかけて、管理主義教育、子どもの自己決定、参加論という文脈において批判が集中した。その後、ブラック校則とそれに基づく厳しい指導は、日本社会においてしばしば批判の的になってきた。その意味において、ブラック校則の問題は、古くて新しい教育課題といえるだろう。

校則の制定根拠、制定権限  

 では、そもそも校則は何を根拠に制定されているのだろうか。  不思議なことに、教育基本法や学校教育法等の教育関係法規の中に直接校則の制定根拠となる法令は存在しない。ただ、裁判例では、学校教育法に基づき設置された学校は、法律上格別の規定がない場合であっても、その設置目的を達成するために必要な事項を校則等によって一方的に制定することができるとするものが多い。
 この場合、校則の制定権限は、学校運営の責任者である校長にあると考えられている。校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する権限を有している(学校教育法37条4項等)。ここでいう「校務をつかさどる」とは、一般に、学校が遂行する業務に関して、その一切を掌握し、処理する権限を指す(校務掌理権)。校則の制定もこの校務掌理権の中に含まれるとするのが実務上の考え方となっている。  
 ただ、実際の校則には、授業等の開始時刻や終了時刻、児童会や生徒会に関する定めなど、学校生活を送る上で不可欠なルールのみならず、登校する際の下着や靴下の色等、必ずしも学校生活を送る上で不可欠とはいえないルールや、校外での服装や頭髪の規制等、家庭生活に関わる規制が含まれていることが少なくない。これが裁判例の指摘する、学校の設置目的を達成するために必要な事項といえるか否かが問題となる。ブラック校則問題は、主にこの校則の限界を巡る対立である。

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