地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

条例REPORT

2024.02.26 政策研究

議員提案政策条例の方向性に関する一考察 ~条例を介した法律の積み残し課題への対応を題材として~

LINEで送る

3 おわりに~議員提案政策条例の方向性の提示~

 国会議員に比べ、政策スタッフの脆弱(ぜいじゃく)性など政策立案面で様々な課題を抱える自治体議員に対して、模倣・追従条例ではない数多くの地域性の高い議員提案政策条例の制定を求めることは現実的ではない(11)
 しかしながら、自治体議員は、住民との多様な接点を有し、住民の声、現場の声に敏感であるという得難い特性を所持している。そして、自治体職員とは異なり、中央省庁との縦関係に拘泥されることもない。そうであるならば、自治体議員の主要な役割の一つとして、既存立法の足らざるがゆえに発せられる住民の声、現場の声に耳を傾け、その足らざるところの補完、すなわち、法律の積み残し課題の解決に資する政策条例の制定など、「質」に重きを置いた条例制定に腰を据えて取り組むことが求められているといえよう。

(1) ここでいう「議員提案政策条例」とは、議員又は委員会が提案した条例(含む改正条例)のうち、議会に関する条例(含む地方自治法96条2項を根拠とする行政計画議決条例、議会基本条例)及び議員の身分等に関する条例以外の政策的な行政関係条例を指す(表2参照)。
(2) 例えば、出石稔「議員提案条例のあり方②─『乾杯条例』から考える」ガバナンス211号(2018(平成30)年)107頁参照。
(3) 法令の「過剰過密」問題については、例えば、礒崎初仁「法令の過剰過密と立法分権の可能性─分権改革・第3のステージに向けて」北村喜宣=山口道昭=礒崎初仁=出石稔=田中孝男編『自治体政策法務の理論と課題別実践─鈴木庸夫先生古稀記念』(第一法規、2017(平成29)年)192〜195頁参照。なお、同論考では、法令の過剰とは、国内のほとんどの領域について必要以上に法令が制定されている問題であり、法令の過密とは、各法令が必要以上に細部まで規定している問題である旨記述している。
(4) 小林美津江「いじめ防止対策推進法の成立」立法と調査344号(2013(平成25)年)25頁参照。
(5) 坂田仰編『いじめ防止対策推進法 全条文と解説』(学事出版、2013(平成25)年)2頁、小林・前掲注(4)26頁及び衆議院ホームページ「第183回国会 いじめ防止対策推進法案 議案審議経過情報」(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/3D12.htm(2024(令和6)年2月18日閲覧))参照。
(6) 坂田・前掲注(5)11頁参照。
(7) 衆議院文部科学委員会のいじめ防止対策推進法案に対する附帯決議については、2013(平成25)年6月19日開会の同委員会の会議録(https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118305124X00720130619&current=6(2024(令和6)年2月18日閲覧))を、参議院文教科学委員会のいじめ防止対策推進法案に対する附帯決議については、2013(平成25)年6月20日開会の同委員会の会議録(https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118315104X00820130620&current=11(2024(令和6)年2月18日閲覧))を参照。いずれも国立国会図書館ホームページ「国会会議録検索システム」を用いて検索・閲覧を行った。なお、同システムは、第1回国会(1947(昭和22)年5月)からの本会議・委員会の会議録を、テキスト又は画像で閲覧することが可能である。
(8) 都道府県条例において、いじめの定義を拡充した条例は新潟県が初となるが、政令市に目を転ずれば、京都市がいじめの定義を拡充した「いじめの防止等に関する条例」を制定し、2014(平成26)年10月2日に公布している。
(9) 当該調査においては、いじめの認知件数について態様別の集計も行っているが、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」の件数、いわゆる「ネットいじめ」の件数は、2016(平成28)年度に1万件を超え1万779件を記録した。翌年度以降も右肩上がりで増加し、2017(平成29)年度は1万2,632件、2018(平成30)年度は1万6,334件、2019(令和元)年度は1万7,924件、2020(令和2)年度は1万8,870件、2021(令和3)年度は2万1,900件、そして2022(令和4)年度には2万3,920件を記録している。
(10) 増加・巧妙化している「ネットいじめ」の問題や対策の必要性を報じるものとして、例えば、新潟県において「いじめ等の対策に関する条例」が制定された2020(令和2)年では、「ネットいじめ防止、新潟で臨時校長会」(読売新聞(新潟版)2020(令和2)年2月18日)、「ネットいじめ5年で倍、昨年度1.7万件」(産経新聞2020(令和2)年10月23日)。最近のものでは、「SNS教育早いうちに、県教委作成小学1~4年プログラム」(新潟日報2023(令和5)年12月31日)。
(11) 滝本直樹「新潟県特定野生鳥獣の管理及び有効活用の推進に関する条例─住民ニーズを踏まえた議員提案による部局横断型政策条例の意義」議員NAVIウェブマガジン2016(平成28)年6月27日号(https://gnv-jg.d1-law.com/login/article/20160627/60271(2024(令和6)年2月18日閲覧))。当該論考においては、自治体議員が取り組むに相応しい政策条例の分野として、執行部の消極的権限争いが生じやすい部局横断型の政策課題への対応を例示している。

 

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

お知らせ

一覧
  • 2024.11.25 システムメンテナンスのお知らせ
  • 2024.01.29 緊急メンテナンスのお知らせ

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る