茨城県農林水産部畜産課家畜衛生対策室
1 条例制定の趣旨・背景
高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)はA型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥類の感染症で、主に冬季に大陸等から渡ってくる水禽(すいきん)類によってウイルスが運ばれて発生します。ウイルスの伝播(でんぱ)力の強さや高い致死性により、養鶏産業に及ぼす影響が甚大であり、鶏肉や鶏卵の安定供給をも脅かす疾病です。
このため、ひとたび発生すると国際的には鶏肉や鶏卵の輸入禁止措置がとられるほか、国内では家畜伝染病予防法に基づき殺処分等の防疫措置を速やかに行うよう義務付けられています。
国内では、令和4年度は26道県で84事例の発生があり、それまで最多だった令和2年度の992万羽を上回る1,771万羽が殺処分されており、鶏卵が不足し、外食チェーン等で卵料理の提供を休止したことや、鶏卵の価格が高騰したことは記憶に新しいところです。
本県においては、令和3年2月に採卵鶏約80万羽を飼養する大規模農場でHPAIの発生がありました。このため、県職員の全庁的な動員のほか、県内の様々な業界団体に協力を仰ぎ、さらに自衛隊にも派遣を要請して24時間態勢で延べ約1万人を動員し、7日間で殺処分作業を実施しました。
この防疫措置において、県職員は1日当たり800人、終盤は1,600人を動員しましたが、この経験により、大規模農場でのHPAIの発生は、飼養鶏を全羽殺処分することによる農場や養鶏産業への多大な被害のみならず、県職員の長期間に及ぶ動員による行政サービスの停滞により県民生活にも影響が及ぶことを強く認識する結果となりました。
その後、国内外のHPAIの発生が依然として増加傾向にあったことから、県内養鶏関係者をはじめ県も警戒感を高めていたところですが、令和4年度には、6農場で発生し、その防疫措置には、県職員、県内業界団体、自衛隊等で延べ3万人を動員し、県内飼養羽数の約30%に及ぶ約430万羽の殺処分を行うなど、過去最大規模の防疫措置を行うことになりました。
これらを踏まえ、これまで行ってきた家畜伝染病予防法による対策に加え、大規模農場を対象とし、HPAIの発生の予防及び迅速な防疫措置を行うために必要な措置を講ずることにより、HPAIが発生した際の行政機能の低下による県民生活への影響を最小限にとどめるとともに養鶏産業の振興を図ることを目的とした「茨城県鳥インフルエンザの発生の予防及びまん延の防止に関する条例」を令和5年4月(一部同年10月)に施行しました。
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