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特集 自治体議員の“なり手不足”問題

2023.07.10 なり手不足

政治の劣化(投票率の低下・無投票当選者率の増加)の打開策(4):選挙を活性化させる新たな自治の動き

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(2)住民による公開討論会や逆マニフェスト
ア 議員立候補者参加の公開討論会
 住民による公開討論会は開催されている。しかし、ほとんどは首長立候補予定者の声を聴くものである。議員立候補者の数は多く、公開討論会はなじまないという声も聞かれる。とはいえ、政策の基本や人柄は分かる。
 議員選挙でも政策選挙とするには、公開討論会のようなものの仕掛けを今後模索したい(2)。北海道栗山町では、住民(元議長など)が合同個人演説会(公開討論会ではない)を企画し開催したことはある(2011年)(3)。議員立候補予定者による合同個人演説会である。廃止された立会演説会と同様だが、告示後、つまり選挙期間中に行われた。新城市のような条例に基づいたものではなく、自主的な試みである。
 地域の団体によって構成される「栗山町議会議員選挙合同・個人演説会推進委員会」が主催した。「候補者が自らの主張を幅広く有権者に伝え、情報提供の機会を設けるとともに、公平性・公開性を確保するため」に行われた。立候補者15人(定数13人(当時))が会場の舞台の前に座り政策等を説明した。2日間で約900人。毎年12会場で行われる議会報告会参加者は約300人なので、住民の関心が高かったことがうかがわれる。長年(当時では6年目)行われてきた議会報告会の実践は、住民による議員評価を当然のものとして受け入れる土壌をつくり出していた。
 候補者相互、また会場参加者からの質問はできない。今後の課題である。この試みは、公職選挙法の欠陥を埋めるという意味で大きな意義がある。

イ 住民からの逆マニフェスト
 ここで取り上げる逆マニフェストは、住民側からマニフェストを提示し、それに賛同する候補者を応援する場として討論会を開催するものである。「逆」というのは、候補者からの政策提案を聴く場ではなく、住民からの提案についての候補者の考え方や思いを聴き討論する場である。また、首長候補者ではなく、議員候補者を対象とした場だ(逆マニフェストを作成し首長候補者との討論の場としたものに、政策研究ネットワーク「なら・未来」がある)。
 兵庫県明石市を中心に活動する「市民自治あかし」(代表世話人・松本誠さん、2011年結成。松本さんは「政策提言市民団体と自称する」としている(4)。選挙に当たって「明日の明石市政をつくる会」と連携)は、「市民がつくる市民の提案」を市長候補者に提案し、公開討論会の場でそれに対する意見を求め、市民と候補者が意見交換する活動を行っている。開放的な意見交換の場だ。検証大会も行っている。
 注目度が低い市議会にスポットを当てる活動を模索している。2023年の年明け早々に「現職議員全員と新人立候補予定者らにも呼びかけ『市議会のあり方を考える討論集会』」が開催された(1月28日、議員4人と40人余の市民が参加)。また、市議選(3月19日、9人の立候補予定者が参加(定数30))と市長選(3月29日、2人の立候補予定者が参加(予定者1人不参加))の立候補予定者による公開討論会を開催した。松本さんは、「4回目の市民マニフェスト選挙が市民と候補者にどのように浸透するか」を期待している(5)

(1) 第17回マニフェスト大賞コミュニケーション戦略賞優秀賞を受賞している。また、NHK「立つ女たち~女性議員15%の国で~」(2023年6月11日放送)では、ファーストペンギンと呼ばれている。
(2) この項は、江藤俊昭「第172回『自治体議会学』のススメ」月刊ガバナンス2023年7月号を活用した。
(3) 兵庫県旧家島町では、婦人会が町長選挙で合同個人演説会を開催したこともある(1994年)。
(4) 松本誠「市政と選挙に主権者市民の主体性を取り戻す──『市民マニフェスト選挙』でめざす市民自治」住民と自治2023年2月号。
(5) 同上論文。なお、松本さんに議員NAVIでこの間の動向を解説していただく予定である。

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