(2)女性の政治進出の促進戦略
政治分野における男女共同参画の推進に関する法律の制定は、議員の多様性の推進だけではなく、議員のなり手不足、投票率の低下といった課題の解決の可能性を高めるものだ。政策における女性の視点が地域経営の政策にとって重要である。また、女性を含む少数派の意見は、議会と首長の癒着や議会運営のマンネリ化の是正に有用である。
同法は、2018年に制定され(旧法)、2021年に改正されている。旧法では、衆議院議員、参議院議員及び地方議会議員の選挙において、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指すこと、国・地方公共団体の責務や、政党等が所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数について目標を定める等、自主的に取り組むよう努めることなどを定めている。
理念法であり、強制力のない法律として出発した。改正では、実施主体として、地方議会も明記された。旧法では、地方議会は明記されず、明記されていた「地方公共団体」の中に含まれると解釈されていたが、改正では明確に地方議会も実施主体となった(2条4項)。また、政党は努力義務のままであるが、国や、地方議会を含む自治体は、「責務」に引き上げられている。
政党には、数値目標、候補者選定方法の改善、人材育成、セクハラ・マタハラ防止の努力義務が課されている。政府には、障壁の調査、参画状況の調査の責務が課せられている。そして、地方議会には、環境整備、人材育成、セクハラ・マタハラ防止の責務が課せられている。表6は、想定される施策である。なお、セクハラ・マタハラ防止の責務は、改正で初めて挿入された事項である。
出典:三浦まり『さらば、男性政治』(岩波新書、2023年)第6章などを参照して筆者作成。
表6 地方議会の三つの責務とその想定される施策
(1) 議員報酬と定数に関する調査特別委員会を設置した。「議員報酬と定数」、「なり手不足」に分けて小委員会を設置し、調査を行っていた。なり手不足に関する小委員会では、児童生徒等の若い世代からの主権者教育への取組みやこれからの議員のなり手を育成する取組みも必要であるとの認識から、特別委員会の最終報告では議会改革推進会議がなり手不足の対策を担うことになった。議会改革推進会議において2023年統一地方選挙に立候補を予定している人や議会や議員に興味のある人等のなり手となりうる人の発掘、及び育成に早急に取り組むこととなった。その一つが「議員の学校」である。
(2) 栗山町議会は、「児童生徒等の若い世代からの主権者教育への取組みやこれからの議員のなり手を育成する取組みも必要」だとしている。
(3) 「議員の学校」の1時間目、2時間目は講義であり、議会のルールや地域経営の軸としての総合計画、地域経営のルールなどについて学ぶ。3時間目から5時間目は議会の傍聴を行う。議会運営委員会、一般質問、予算審査特別委員会を傍聴し、6時間目は2月臨時会議(議会)の議案を使って、模擬議会を開催している。