(2)無投票当選の深刻化、選挙戦でも欠員?!
無投票当選も深刻化した。道府県議会議員選挙では無投票選挙区が348選挙区のうち37%、無投票当選者率25.0%(前回より縮小)となっている。また、後半の選挙での無投票当選は、市長選挙28.4%、区長選挙9.1%、市議会議員選挙3.6%、町村長選挙56.0%、町村議会議員選挙30.8%となっている。
市町村長選挙、市町村議会議員選挙が1件も実施されない県がある。富山県だ。富山県議会議員選挙は実施されているが、その投票率は過去最低の45.7%となった。知事選挙は実施されていない(山梨日日新聞2023年4月21日)。
なお、立候補者が定員を下回る「定数割れ」が続出した。前回(8町村)の2.5倍となる20町村に上ったことも、今回の統一地方選挙の特徴だ。
また、今回の統一地方選挙の議会議員選挙では、獲得票が当選ラインに達しても当選者にならない事例が生じた。選挙戦でも欠員が生じた選挙もある。滋賀県日野町議員選挙(定数14)、東京都瑞穂町議員選挙(定数16)や長崎県長与町議員選挙(定数16)では、それぞれ法定得票数未満で欠員が生じた。
法定得票数は、地方議会議員選挙の場合、有効投票総数を議員定数で割った数の4分の1以上であり、それを下回る場合、当選ラインには達しない。2022年の品川区長選挙や2017年の市川市長選挙など1952年以降でも10例しかない(「最下位で当選のはずが一転落選に 足りなかった法定得票数 滋賀・日野町議選」(産経新聞2023年4月27日)。
(3)地域民主主義の構造的変化
本稿では、議員のなり手不足や投票率の低下など地域民主主義の劣化の要因とその打開策を探る。これらを生み出している構造的変化を確認しておこう(表参照)。この構造的変化は、統一地方選挙をはじめとした地方政治の劣化にボディブローのように効いている。
① 議員数の激減(平成の大合併以前の6万人から3万2千人に減少)。身近な議員が激減している。議会・議員活動が住民に伝わらない。
② 議会権限の拡大。議会・議員活動量の増大、それによる兼職が困難となっている。
③ 人口減少・高齢化。生産年齢人口の層が減少し、出身母体(自営業者・農業者)も減少してきた。
④ 統一地方選挙の統一率の減少。マスコミは4年に一度の統一地方選挙について集中的に報道するが、統一率の低下や身近に議員がいないことで関心は薄れる。
⑤ 政治への関心の希薄化。民主党政権の瓦解とその後の自民党一強によって、政治への関心は低下した。また、社会資本の充実がある程度達成されると、それ以上は民間に委ねられることで、政治・行政への関心が希薄化している。
表 地方政治の劣化を進める構造的変化