地方自治法に基づく意見書提出を
地方自治法99条「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる」という規定に基づき、地方議会において、提出された意見書の審議を行っている。
ただ、「当該普通地方公共団体の公益に関する事件」と規定されているにもかかわわらず、当該団体の公益とは解釈できないような、国の外交問題に関する意見書も散見される。
ところで、外交問題に関する意見書について、「地方公共団体の議会の意見書の提出について」という通達が、当時の自治事務次官から昭和38年8月29日、昭和41年3月2日の2回にわたり、各都道府県知事を通じて市町村へ発出されている。通達の要点は、「国の外交政策に関連し外国との交渉に影響を及ぼすおそれのあるものは、慎重に取り扱うことが適当であると思料するので通知する」というものである。
なお、「ただし、特定の外交問題が当該地方公共団体の利害と直接関係があるとき、地方議会がそれを取り上げることは、当該地方公共団体の『公益に関する事件』に該当するので差し支えない」という有識者の見解が示されている。
福津市議会の事例として、「国民的合意のないままに安全保障法制の見直しを行わないよう求める意見書」が提出されたことがある。
そこで、私は提出議員へ「意見書の末尾に地方自治法99条の規定により意見書を提出するとあります。また、地方自治法99条には、『普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる』と記載されています。本意見書が地方自治法99条の当該団体の公益という定義になじむのかどうか、提出者の見解をお聞かせください」という質疑をはじめ、福津市議会会議規則56条「質疑は、同一議員につき、同一議題について3回を超えることができない」という規定に基づき3回行ったところ、提出議員から多岐にわたる答弁をいただいた。
ただ、答弁の一部分だけを私が選んで本稿に記載することは、答弁趣旨を曲解に導くことにもなりかねないので、ここに記載することは慎むこととする。
地方自治法99条の定義になじむものかどうかの判断は読者に委ねるが、ほかにも「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める意見書」、「北朝鮮による拉致問題の早期解決を求める意見書」、「集団的自衛権行使を容認する解釈改憲を行わないことを求める意見書」、また、決議として「ロシア軍のウクライナ侵攻に対し断固抗議をし恒久平和を求める決議」などが提出されたことがある。
ところで、意見書の提出要件を満たしていれば、議長は受理する義務があるが、国会、都道府県議会、市町村議会が議論する議案は分担されており、地方議会において、あたかも国会におけるような議論を展開することがあれば、それは、地方議会の越権行為といわれかねない。
そこで、議長が受理する義務があるといえども、各議会の議会運営委員会などにおいて、外交問題に関する意見書の取扱いについて、協議を行う必要があると考える。
「議会白書」策定のススメ!
福津市議会がまだ取り組んでいない「議会白書」について述べるのは、はばかられるところだが、私の問題意識として捉えていただければ幸いである。
まず、議会白書は「誰のためにつくるのか」。
それは、議会の活動を知らない住民のためにつくるのである。白書策定に当たっては、白書に記載する基本的な事項をどこで決めるのかをまず議論する。議会運営委員会なのか、それとも議会白書策定特別委員会(仮称)を設置するのか。
また、白書には、議会がどのような活動を行っているのかの全貌をつまびらかに記載することが基本と考える。なぜなら、議会にとって不利になることを記載しなければ、住民に対して隠しごとをすることになる。ただし、個々の議員の不利になることや議会の秘密事項に関することは記載しない等々の基本的な方針を決める必要がある。
白書の内容としては、①年間の会期日程、②本会議日数、③委員会日数、④首長提出議案数、⑤議員提出議案数、⑥請願・陳情提出件数と採択件数、⑦採択した請願等のその後の状況、⑧常任委員会所管事務調査の状況、⑨議員報酬、期末手当等、⑩政務活動費の活用状況、⑪県内他議会との比較、⑫議員の職業の有無(有給、無給)、⑬政策提言数と内容などが考えられる。
そして、毎年、記載内容の見直しを行い、見直したことがあれば、それを次回発行の議会白書に記載する。
さらに、地方自治法100条19項で規定されている、議会図書室に議会白書を置き、同条20項の「図書室は、一般にこれを利用させることができる」の規定に基づき、「開かれた議会」の一環として、議会図書室を住民に開放したり、「議会だより」や「議会ホームページ」で住民に発信すれば、住民の議会へ注ぐ視線が、ちょっぴり熱くなるものと考える。