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議会REPORT

2023.01.12 一般質問

めざすべき地方議会のあるべき姿についての一考察 ~住民から「近くて遠い地方議会」から「近くて近い地方議会」へ~

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予算修正案か予算組替え案か  

 福津市は、平成17年に二つの町が合併して誕生したので、当然、二つの庁舎が存在していた。この二つの庁舎の統合に係る予算が、平成24年度福津市一般会計予算案に計上された。これを受け、会派で鋭意協議を行い、予算修正動議か組替え動議か、二つの選択肢を検討した結果、組替え動議を提出するという結論に至り、会派代表が提出者となり、2人の賛成者を列記して、予算審査特別委員会委員長へ組替え動議を提出した(紙幅の関係で組替え動議の趣旨、提出までの流れなどは省略する)。  
 同委員会における提案理由の説明は次のとおりである。  
 「平成24年度福津市一般会計予算案については、これを撤回し、下記のとおりすみやかに組替えを行い、再提出するよう、動議を提出する。  
 1、提案理由:庁舎統合問題はいまだ十分な議論が尽くされているとはいえない状況である。地方自治法4条により、庁舎の統合は住民の利害に大きく関わるため、地方公共団体の事務所の位置を決定し、また変更するための条例の制定改廃については、議会の3分の2以上の同意を必要とする特別議決となっている。この地方自治法4条の主旨は、庁舎統合については住民の代表である議会と、執行部で十分な協議と議論を尽くし、住民の理解を求めることである。  
 したがって庁舎統合問題については、あらゆる選択肢を検討すべきである。いまだ庁舎統合について議会の理解を得られたとはいえない状況で、福間庁舎に統合するための調査費を計上することは、議会と執行部の信頼関係を損なうものである。  
 2、組み替えるべき事項:2款総務費、1項総務管理費、6目企画費、庁舎統合専門調査委託料を削除する。」  
 その後、本動議に対する質疑、討論が行われ、採決の結果、可決されたが、会期途中の本会議の追加日程で、当該組替え動議の審議が行われ、採決の結果、否決となった。  
 そこで、「可決されても法的拘束力はないが、最低でも付帯決議を提出しなければ、議会とはいえない」という会派における協議に基づき、定例会最終日の本会議に同予算案に対する付帯決議を提出した。  
 決議の要点は次のとおりである。  
 「平成24年度一般会計補正予算に対する付帯決議:2款総務費、1項総務管理費、6目企画費庁舎統合専門調査委託料の予算執行に当たっては、地方自治法4条2項及び3項の趣旨を踏まえ、議会と十分協議と議論を尽くす必要があることから、福間庁舎への統合を前提とせず、庁舎統合問題について、専門的見地からあらゆる選択肢に関する調査・検討を実施することを要望する。」  
 その後、質疑、討論を経て、採決の結果、福津市一般会計予算に対する付帯決議は、原案のとおり可決された。  
 なお、組替え動議の委員会可決、本会議否決はレアケースであるが、最後の方法として、付帯決議を提出し可決に至ったことを、議会機能を駆使した事例として記載する。

議会が採択した請願の実現努力を  

 日本国憲法で定める「請願権」は、国民が国や地方公共団体に対して、様々な要望を提出できる権利であり、16条にその定めがある。  
 その条文には「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」とある。  
 ところで、請願を提出するには、紹介議員が必要であり、紹介議員は良識をもって請願に対応する姿勢が求められる。  
 ただ、紹介議員は請願の願意には賛成するが、願意のすべてを把握しているわけではないという認識を持つ必要がある。  
 なぜなら、請願に記載されている問題点の現状を把握し、現在の法制度を理解し、その問題点と対応策及び財源の背景をも把握して、請願の説明を行い、質疑に答えられる議員が本当にいるのかという問題意識を持つべきであると考えるからである。  
 そして、議会は請願を採択した後、その請願がどうなったかを追跡する義務があり、請願を採択したら、それを実現させようという行動が伴わなければ意味がなく、この責任をとらないのなら、住民は議会へ請願を提出したかいがない。  
 なお、請願は採択しなければ、首長には届けられない。  
 請願を採択したなら、実現のために精一杯努力するのが議会の責務であり、この取組みを充実させれば、住民は議会を頼りにするようになり、住民から「近くて遠い地方議会」から「近くて近い地方議会」への脱皮の糸口が見えてくるのではないだろうか。  
 ところで、当議会の請願の実現に向けた直近の事例としては、市が入浴施設を備えた福祉施設の閉館方針を公表したことにより、「施設の売却先が見つからないことを理由に休館するとあるが、休館せずに継続運営を求める」旨の請願が提出され、審議の結果、採択された件がある。  
 そこで、議長名をもって市長へ「議会が採択した請願について、地方自治法125条の規定に基づき、請願の処理の経過並びに結果を報告されるよう請求する」旨の文書を提出した。  
 本請求に対し、市長から「本請求に関して協議した結果、市による運営も非常に難しい状況であり、議会において採択された『休館せずに継続運営を求める』旨の請願項目については、実現のための措置を講ずることが困難であり、請願の趣旨、願意は理解できるが、今後は建物や土地を民間に譲渡するという選択肢だけでなく、広く民間や地域からの提案も受けて再生と活用を探り、皆様から親しまれる施設になるよう努めていく方針である」旨の結果報告書が届いた。  
 請願は住民の政策提言という位置付けであり、議会としては、今後も採択した請願の結末を見届けなければならない。

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