地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

議会REPORT

2023.01.12 一般質問

めざすべき地方議会のあるべき姿についての一考察 ~住民から「近くて遠い地方議会」から「近くて近い地方議会」へ~

LINEで送る

議員は全体の奉仕者としての言動を

 日本国憲法15条2項は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」、また、地方公務員法30条では「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」と定められている。  
 地方公務員法上、地方議会議員は非常勤特別職の公務員という位置付けであるので、「全体の奉仕者」として、矜持(きょうじ)をもっての言動を心がけなければならない。
 ところで、10年以上前のことだが、私が住む団地の区長が拙宅に来られ、「緊急を要する現場を見てもらいたいので、一緒に来てくれませんか」といわれるので、ご一緒したところ、市が管理する団地内の街路灯のポールの根本が5分の2ほど半月の形で腐食していた。  
 地域の問題は区長を通じて市に要望する流れであったが、区長が「とても危ない状態だから、早急に対応してほしいと市に相談しているが、1週間たっても対応してくれないので、江上さんに相談しました」といわれた。  
 それまで、区長から地域の問題について相談を受けたことはなかったが、街路灯が倒れでもしたら、人命に関わることであり、たまたま行政が失念したのであろうという惻隠(そくいん)の情を携えながら、すぐ市役所に担当部長を訪ね、携帯電話で撮った写真を見せながら、「部長、これを見てください。人命に関わる事案ですよ」と話したところ、部長が驚がくの表情を浮かべ、「これは危ない。すぐ対応します」といって即、指示を出し、当日のうちに街路灯のポールを根元から切断してくれた。  
 次の定例会において、この問題を一般質問で取り上げなかったが、もし私が一般質問を行うなら、「市内の道路に設置されている街路灯の維持管理をどのように行っているのか、市の見解を求めます。なお、最近の事例として、私が住む団地内の街路灯のポールの根本が5分の2ほど腐食していました。区長が市に相談したにもかかわらず、約1週間放置されていたそうです。もし、街路灯が倒れ、人命に関わることになったらどうするのかという危機感を覚えましたので、一般質問通告を行った次第です」ということになるだろう。  
 全体の奉仕者としての認識がなければ、「私が住む団地内の街路灯のボールが腐食していたのを、約1週間放置していたが、このことを市はどう考えているのですか」ということになるのではなかろうか。  
 私の議会における発言が全体の奉仕者たるものかどうかは読者の判断に委ねるとして、私が市議会議員当選時から行ってきた質問・質疑は、当選後最初の一般質問では「市長の税に対する基本的認識を問う」を通告し、市長との政策論議に臨んだ。その後、総合計画、市長が描く市の将来像、市長の市政運営に対する基本姿勢、市役所を真に市民の役に立つところにするための考え、財政の現状と将来展望、自主財源の確保、行財政改革、中期財政見通し、市税等の滞納対策、地方創生、企業誘致、教育基本法改正に伴う学校教育の現状、民生委員・児童委員定数の適正化、マイナンバー導入による個人情報流出防止策など多岐にわたる質問を行ってきた。  
 予算審査特別委員会では、国の地方財政計画などに基づき、予算編成を行う市長及び執行機関に対して、私は「地方交付税、臨時財政対策債などの計上額について、地方財政計画をどう分析して計上したのか見解を求めます」という趣旨の質疑などを行ってきた。
 また、某年度の決算審査では、本市の決算報告書に記載されている普通会計決算カードに基づき、オリジナルの「普通会計決算分析表」を作成し、「扶助費が約9,500万円、公債費が約5千万円、物件費が約1億円、繰出金は約2億円増加しています。その分析結果について、特に大幅に増加している繰出金については、詳しい答弁を求めます」、「分母となる経常一般財源と分子となる経常経費充当一般財源を比較してみたところ、経常収支比率が前年度と比べ、4ポイント悪化している。この要因について答弁を求めます」といった質疑を行った。  
 なお、「当該予算を執行して、どのような効果があったのか答弁を求めます」という質疑も決算審査では大切であると考える。  そして、決算審査における指摘事項を記載した付帯決議案を提出し、決議が本会議で可決されれば、法的拘束力はないものの、首長が同決議を尊重して、議会の意思が翌年度の予算編成に生かされる道が開かれると考える。
 家庭も家計が基本であり、地方自治体も財政が基本であるという考えに基づき、長年にわたり、市長はじめ執行機関と財政論議を展開してきた。なお、中立・公平の姿勢を求められる議長就任後は、一般質問は行っていない。  
 ところで、市議会議員当選時から、「全体の奉仕者」としてはいかがなものか、と違和感を覚えることがあった。それは、福津市立7小学校、3中学校の入学式、卒業式の議員への案内に関してである。校長名での案内は、議員が居住する校区の小・中学校からのみであった。  
 コミュニティ・スクールの視点はあるが、私は議員への案内は、議員に選択肢を与え、いずれの小・中学校の式典にも門戸を広げ、出席できるようにするべきであると考えていた。  
 早速、議長就任後、この可否について、議会事務局を通じて教育委員会へ相談したところ、教育委員会から意向に沿って対応する旨の回答を得ることができ、長年抱き続けていた問題意識が氷解するのを実感する場面となった。  
 そこで、議長名で「市内小中学校に係る卒業式・入学式出席希望調査について」という標題の文書において、「居住地校区以外の小・中学校への式典出席を希望する場合は、調査表に記入の上、事務局へ提出してください」という内容を記載して、全議員を対象に調査を行い、回答を得た次第である。
 なお、私は議員任期中、かなう限り多くの小・中学校の式典に出席することで、各学校の特徴など新しい発見や気づきがあると考えていた。ところが、新型コロナウイルス感染症により、学校長名で式典出席をご遠慮願いたい旨の文書が届き、私の考えを実現することができなかったことを、とても残念に思っている。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 424

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)始まる(平成19年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る