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特集 関係人口を創出する

2022.07.11 まちづくり・地域づくり

関係人口づくりの実践にあたって

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徳島大学准教授 田口太郎

 「関係人口」に高い注目が集まっている。2019年に発表された政府の第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中に「関係人口の創出・拡大」が示されて以降、全国で急速に「関係人口の創出・拡大」に向けた取組が広がっている。ところが、肝心の「関係人口」の定義は曖昧であり、「観光以上・移住未満」といった広い概念であることから、地域戦略の中に「関係人口」を位置づけようとする場合は、広い領域のどの部分の関係人口をイメージするか、によって取組のデザインを変えていく必要がある。
 一般的な「関係人口」の認識はメディアによる発信の影響もあり、都市住民が地域と関わりを持つ、というスタイルが中心となってしまっており、地方としてどのように都市住民と向き合うか、という点についてはあまりいわれていない、というのが残念な点である。「関係」というのは「間の質的つながり」であるのであれば、当然、地域外と同様に地域内の思いも大切にする必要がある。本稿では地域として関係人口とどのように向き合うかについて論じたい。

関係人口は古い概念ではないが、時代の変化が可能性を広げている

 「関係人口」はこの5年ぐらいで急速に広まった。政府による後押しの影響も大きいが、それまで「都市から地方へ」の流れの中心に位置づけられてきた「移住」への限界感も「移住未満」へシフトした大きな要因といえるだろう。移住行動自体はさほど変化していないにもかかわらず、なぜ移住に限界感を感じているのか、の考察が重要ではないだろうか。「移住」については、確かに都市から地方へのムーブメントが起きて、複数の自治体で「社会増」が実現している。しかし、各自治体が策定した人口ビジョンに示すような人口減少に歯止めがかかる、というほど大きな成果にはつながっていない。都市で開かれる移住フェアでは各自治体のアピール合戦が続き「移住者獲得競争」と揶揄(やゆ)されている。そうして獲得した移住者によって地域の課題が改善し、地域に活力が生まれたか? というと実態はさほど変わっていない。ならば次なる手は何か、というときに「移住」ほどの負担がなくとも都市から人を呼び寄せる枠組みとして「関係人口」に焦点が当たり、“地域にいる新しい属性”として認識しようという動きが広がった。
 「関係人口」が新しい概念か、というと決してそんなことはない。かつての「交流人口」はまさにそれを目的としてつくられた用語だった。1990年代、地方の地域づくりの中心には観光が置かれていたが、大型観光バスによる集団旅行からマイカーによる個人観光が広がる中で、観光客と積極的に交流することで地域に活力を生み出していこう、という動きが広がった。そして、それまで観光客を「観光入込客数」としてカウントしていたものと区別して、地域と交流するような「交流人口」を増やすことが各地で進められた。しかし、いつしかこの概念も陳腐化してしまい、今や観光客を「交流人口」と呼ぶようになってしまった。そして、再び質的交流を行う外部者に「関係人口」という新しい“用語”をつけている、というのが実態だ。
 では、ただ用語が新しくなっただけ、と片付けてよいのか、というとそうではないと筆者は考えている。1990年代と現代、何が違うのか。都市と農村の距離感がだいぶ近づいている。道路や鉄道をはじめとした交通インフラの整備により都市と農村の移動時間が短縮され、両者はより近づいたという面と、さらに、それまで都市に向いていた国民の関心が地方へ向くようになり、一般社会に「地方」という場所が肯定的に認知されるようになった、という社会的な面の変化である。この二つの変化によって、農村と都市はかなり近い関係になったといえるだろう。こうした社会のベースの変化の中で地方がどのような戦略を考えるのか、が「関係人口」を考える上で重要である。

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