6 活動人口の可能性
現時点において、地方創生の一つの目標が「人口減少の克服」です(「現時点」と書いたのは、今後、地方創生の目標が変わるかもしれないからです)。人口減少を克服するには、自然増と社会増しかありません。しかし、自然増は出産可能な世代が減少することで、現実的には厳しくなりつつあります。社会増は住民の獲得を目指す「自治体間競争」を招いています。自治体間競争の功罪は多々あります。「罪」に着目すると、一部の勝者と多くの敗者に分かれ、地域間格差が二極化しつつあります。条件不利地は、自治体間競争の中で選ばれることなく、消滅に向かいつつあります。
確かに「人口の維持」や「人口の減少速度を遅くする」ことも大事な一視点です。これらの視点に加え、「減った人口の中で、どのように元気な地域を創造するか」も重要な観点と考えます。特に条件不利地は、人口が減っていく中で持続性を模索しなくてはいけません。ここで登場する一つのキーワードが「活動人口」です。
簡単なシミュレーションをしてみます。図3を見てください。現在と未来があります。定住人口が100人から80人に減っていきます。一方で、活動人口が20人から30人に増えれば、地域における活動人口率が上昇します。これは、人口が減っても元気で、価値ある地域になることを意味します。
図3 活動人口の利点
このような地域は魅力が増しますから、地域外から新しい人口を呼び込む可能性が強まるでしょう。人口が減少しても、価値ある、元気な地域を創造していくためには、「活動人口」にも注目していく必要があるでしょう。
本稿で紹介した「活動人口」の増加を目指すために、議員はどのような質問や取組み等をすべきでしょうか。本稿で少し触れましたが、悪い関係人口、あるいは普通の関係人口を良い関係人口(活動人口)に変化させていく一視点がシビックプライドです。シビックプライドを高めていく取組みを進めていく必要があるでしょう。
筆者は3~4年ほど前から活動人口に注目しています。活動人口を創出するために、現在、いくつかの自治体と連携して社会実験を行っているところです。機会あるときに、活動人口のあり方や成果についても記述したいと思います。
(1) 詳細は、以下のURLを参照してください。https://www.mlit.go.jp/report/press/kokudoseisaku03_hh_000223.html(2022年5月29日アクセス)。
(2) シビックプライド(Civic Pride)とは「都市に対する市民の誇り」という概念で使われることが多くなっています。日本の「郷土愛」といった言葉と似ていますが、単に地域に対する愛着を示すだけではありません。「シビック(市民の/都市の)」には権利と義務を持って活動する主体としての市民性という意味がります。そこから「当事者意識に基づく自負心」を指します。
相模原市は全国で初めてシビックプライドを推進する条例を制定しています。条例名は「さがみはらみんなのシビックプライド条例」です。シビックプライドに関しては、牧瀬稔=読売広告社ひとまちみらい研究センター編著『シティプロモーションとシビックプライド事業の実践』(東京法令出版、2019年)272頁を参照してください。同編著は政府刊行物等普及強化連絡懇談会第19回本づくり大賞優秀賞を受賞しています。
(3) 近年は「共創」という概念が流行しています。ある意味「共創の競争が始まっている」ともいえます。多くの自治体が共有もせず、共感もなく、一足飛びに共創に取り組んでいます。これは「名ばかり共創」であり、真の共創が実現されるとは思えません。
(4) ジョン・グッドマン(畑中伸介翻訳)『グッドマンの法則に見る 苦情をCSに変える「戦略的カスタマーサービス」』(リックテレコム、2013年)。