3 レッドオーシャン化する関係人口
今日、特に地方創生の中で関係人口は重要視されています。そのため多くの自治体が関係人口の獲得や創出に取り組んでいます。その結果、「関係人口市場」はレッドオーシャンとなっています。レッドオーシャンとは「血で血を洗うような激しい競争が行われている既存市場」を意味します。
言い方に語弊がありますが、「現在は関係人口の獲得競争が始まっている」といえそうです(関係人口の「創出」競争は悪くはないのですが、「獲得」競争には注意しなくてはいけません)。
数年前までは、定住人口の獲得競争が激化していました。この競争が様々な理由から収束に向かいつつある……と思っていたら、今度は「関係人口獲得競争」が勃発しつつあります。
この「関係人口獲得競争」で勝ち残る(?)ためには、戦略的に取組みを進めていく必要があるでしょう。ところが、失礼ながら多くの自治体は戦略性が欠如しています。結局、関係人口の獲得競争に参画しても、成果が導出されず、徒労感のみが残るケースが多く見られます。
4 関係人口の推計値
関係人口に注目する傾向を指摘しました。それでは、現在、関係人口はどの程度存在しているのでしょうか。国土交通省の「『地域との関わりについてのアンケート』調査結果」(2021年3月17日)は、関係人口の推計値を算出しています(1)。
同調査結果によると、三大都市圏が約861万人、その他地域が約966万人となり、合計約1,800万人と推計しています。単純に市区町村数で割ると、1団体当たり約1万人の関係人口を得ることになります。読者は、この数字をどう捉えるでしょうか。当たり前ですが、関係人口は無尽蔵ではありません。限りある関係人口を奪い合う傾向が強まりつつあります。
国土交通省の調査以外には、山梨県が関係人口を把握していました。同県は関係人口の類似概念として「リンケージ人口」を提起しています。リンケージ人口とは「山梨県への経済貢献、愛着・帰属意識の高い人」を意味しています。具体的には、別荘客ら二地域居住者、山梨県出身の帰郷者、日本人観光客を想定しています。
山梨県のリンケージ人口は6万4,700人です(2018年6月5日の知事記者会見)。この数字は、県内への滞在日数や消費額から定住人口何人分に相当するかを算出しています。
地方創生に関して、山梨県は2060年までにリンケージ人口を25万人ほど確保し、定住人口の約75万人と合わせて100万人の達成を目標としています。すなわち、山梨県は減少した定常人口をリンケージ人口で補うことを目指しているようです。