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2022.04.25 政務活動費

議員報酬をめぐる「新しい原価方式」とは!(下) ──『議員報酬・政務活動費の充実に向けた論点と手続き』刊行に寄せて──

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《第32次地⽅制度調査会答申と令和4年報告書との関係》  
 第32次地⽅制度調査会答申では「第5 地方議会」の「2 議員のなり手不足に対する検討の⽅向性 (3)議員のなり手不足に対する当面の対応」において「② 議員報酬のあり⽅」の項が設定されている。令和4年報告書からその論点を確認しておきたい(抜粋)。

① 第32次地⽅制度調査会の「議員報酬については、主として小規模市町村において、それだけでは生計を維持できないほどの低水準であり、そのことが議員のなり手不足の要因であるとの議論がある」との指摘  
 他の特別職とは異なる(報酬や費用弁償の支給の義務化や期末手当の条例での可能性)とはいえ、議員報酬は「役務の対価」であり生活給を前提とした給与ではない。それにもかかわらず、「生計が維持できないほどの低水準」ということは、議員はボランティア・名誉職でも、非常勤でもない議員の活動に即した適切な報酬が必要なことを意味し、議会及び議員の位置付けの必要性を⽰している。

② 第32次地⽅制度調査会の「議員の活動量と⻑の活動量を⽐較し、その割合を基に、住⺠と向き合い適正な水準について議論するなどの積極的な対応を講じている事例もある」との指摘  
 まさに町村議会モデルの原価⽅式(昭和53年、改訂平成31年)であり、それを活用した議会の実践に基づいている。今日、地⽅分権改革の進展(特に、機関委任事務の廃止)により、地⽅議会及び地⽅議会議員の役割と責任は格段に重くなり、それに伴い議員の活動量も増加しているにもかかわらず、町村の議員報酬が約30年間、ほぼ同水準であることを見直すためにも重要な手法である。

③ 第32次地⽅制度調査会の「地域の実情や議員の活動の状況、物価の動向等に応じ、議員報酬の水準のあり⽅を検討することが考えられる」との指摘  
 これもまさに町村議会の原価⽅式(昭和53年、改訂平成31年)の実践である。「地域の実情」及び「物価の動向」は、算定基礎となる⾸⻑の給料に反映されており、「議員の活動の状況」の考察は、令和4年報告書の主題である。

④ 第32次地⽅制度調査会の「待遇が議会や議員の活動に見合うものであることについての住⺠の理解と信頼が前提になる」「(議員報酬の水準は)各議会において説明責任を果たしながら⾃主的に決定する必要がある」との指摘  
 原価⽅式は、科学的に導かれた解答としての数値ではない。住⺠に説明し住⺠と議論するためのものである。活動量を軸とするが、その内容が問われる。極論すれば、住⺠福祉の向上に連動しない活動は、活動量が豊富でも住⺠から賛同されない。原価(活動量)だけではなく「議会・議員の活動内容を踏まえた原価⽅式」が必要である。また、特別職報酬等審議会が設置され答申に基づき報酬額が確定されることが一般的である。住⺠⾃治を進める視点からの特別職報酬等審議会の委員選任の必要がある。また、議会が住⺠に直接説明する場を設置すること、議会に⾸⻑に設置される審議会の類似組織を設置することも模索してよい。

⑤ 第32次地⽅制度調査会の「小規模市町村を中心に政務活動費が支給されていない団体があるが、(中略)議員の活動の実態を踏まえて、活用を検討することも考えられる」との指摘  
 政務活動費は行政監視力及び政策提言力を高めるために重要な条件である。政務活動費は一部の都道府県議会や市議会の議員・会派の政務活動費の不正受給の広がりによって、交付条例制定を躊躇する議会もある。議員報酬とともに、政務活動費支給の重要性を住⺠とともに考え条例制定を進めることが必要である。その際、透明性だけではなく成果を住⺠に説明することが求められる。  
 なお、議会事務局職員の負担増にならないよう、政務活動費の運用指針や手引きを作成し事務をマニュアル化するなどの工夫が必要である。
 

(4) 松本英昭『新版逐条地⽅⾃治法〈第9次改訂版〉』(学陽書房、2017年)740頁、今村都南雄=辻山幸宣編著(地⽅⾃治総合研究所監修)『逐条研究 地⽅⾃治法Ⅲ』(敬文堂、2004年)1098頁、1100頁。
(5) 大森彌『⾃治体議員入門』(第一法規、2021年)34頁。
(6) 各三議⻑会調べ。調査対象期間は平成31年1月〜令和元年12月。ただし、都道府県は地⽅⾃治法102条の2による「通年の会期制」を採用する1団体、市区・町村は同条による「通年の会期制」及び⻑期間の会期を運用で設定する「通年議会」を採用する団体(市区41団体、町村59団体)を除いて集計している。

 
【追記1】 本稿は、令和4年報告書の紹介のために執筆した。その報告書のポイントのいくつかを取り上げ、実際に報告書を手にとっていただくためのイントロダクション・導入という意味がある。なお、「住民自治を進めるための議員報酬──『新たな原価方式』の意義と課題」地方議会人2022年4月号にもポイントを論じている。本稿とともに参照していただきたい。
【追記2】 平成31年報告書では、数値化にあたって議案の精読や住民からの意見聴取など、「表(おもて)に現れない活動量」を2分の1とするなどの手法を用いたが、令和4年報告書では活動量すべてを算出している(表に現している)ことは、すでに示した(本稿(上)注(3)(2022年4月10日号)参照)。令和4年報告書では、さらに原価方式で活用する議員活動項目(領域)を示すことで、技術的マニュアルとして活用することを重視している(本稿では省略)。
【追記3】 議会活動と議員定数等の関係については令和4年報告書でも検討しているが、平成31年報告書で詳細に検討している。併せて参照してほしい。

 

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