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2022.04.25 政務活動費

議員報酬をめぐる「新しい原価方式」とは!(下) ──『議員報酬・政務活動費の充実に向けた論点と手続き』刊行に寄せて──

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(3)会期日数だけが議会・議員の活動ではない  

 会期日数は、都道府県議会や市議会と⽐べて少ない(年間平均会期日数:都道府県106.4日、市区90.7日、町村43.8日)(6)。この会期日数の少なさを根拠にして、町村議員の報酬額が都道府県議会議員や市議会議員の報酬より低額でよいわけではない。  
 そもそも、議会・議員は会期日数だけ活動しているわけではない。原価⽅式は、会期日数だけを素材として判定しているわけではないことをあらためて確認しておきたい。その上で、会期日数の短さ、とりわけ都道府県議会や市議会との会期の相違の要因を探りたい。  
 町村議会の会期が短い要因の一つは、町村議員は兼業が多いことによる。例えば、農業者は農繁期・農閑期を意識し会期日程を、また⾃営業でも会期を明確にすることを要請していた。また、町村議会の議員数が少ないことによる議会運営上の特徴もあげられる。例えば、すべての議員が一般質問したとしても都道府県議会や市議会よりも時間は短くなる。さらに会派制を採用している議会は少なく、会派代表質問もないことや、委員会への議案付託が少ないことなども会期が短くなる要因にあげられる。  
 議員は会期中だけ活動しているわけではない。閉会中の委員会の継続審査(調査)、議員派遣・委員派遣などの活動はさることながら、町村が先駆的に始めた議会報告会や出前議会、住⺠懇談会など住⺠との対話等の活動は、町村の場合、会期外(閉会中)に行っていることが多い。

(4)特別職報酬等審議会に議会も無関係であってはならない  

 特別職報酬等審議会は⾸⻑によって設置される機関であろうとも、議会は無関係ではない。議員報酬が議会によって増額される「お手盛り」への批判からその審議会が設置されるようになっていることを考慮すれば、⾸⻑が審議会委員を選任するにあたって、その妥当性、いわば説明責任が問われるのは当然のことである。⾃治省の通達によって審議会設置が広がったが、当時住⺠の声を聞くといえば審議会が想定された。審議会は⾸⻑に設置される。多様な住⺠参加が構想されている今日、議会側も特別職報酬等審議会の委員の妥当性に関心を持つべきである。なお、今日多様な住民参加が構想されている。議会にもである。議会側に審議会の類似機関を設置することも想定してよい。

(5)負のイメージで政務活動費の導入を躊躇(ちゅうちょ)すべきではない  

 政務活動費に対する不正受給の多さ、さらには不正受給を行った一部の不適格者の行為によって拡大した政務活動費に対する負のイメージもあってか、とりわけ住⺠から距離が近い町村議会において政務活動費が普及していない。このようなことから、政務活動費に対する透明性や監視機能が重視されるようになり、1円からの領収書添付やホームページでの情報公開などの取組みが広がっている。
 政務活動費をめぐる論点は、その透明性の確保に目が向けられがちであるが、これは重要ではあるものの形式的な手法を論じているに過ぎない。最も重要なことは、政務活動費を活用して住⺠福祉向上につなげることである。それを住⺠に説明することが必要である。  
 町村では政務活動費支給条例制定自治体数は、都道府県や市と比べて極端に低い(2割)。しかも制定している自治体の支給額も低い(月額9,500円)。政務活動費の支給条例制定自治体数は、都道府県によって大幅に異なる。隣接団体比較や類似団体比較に基づいている。都道府県ごとに大幅な相違がある(令和4年報告書)。負の連鎖を断ち切る戦略が都道府県ごとに必要になっている。

* * *  

 議員報酬は、増額傾向が見え始めてきた。もちろん、コロナ禍で住民の困難が続く中で住民への説明を怠っていれば住民から批判を浴びる。住民に十分な説明をせずに増額条例を制定した自治体の中には、住民が元に戻す条例案を直接請求し、それを議会が否決すると選挙で多くの新人が当選したところもある。議員報酬や政務活動費をめぐる議論は、住民と議会を結び付ける契機にもなるし、逆に乖離(かいり)させる契機にもなる。住民自治を進めるテーマとして理解していただきたい。
 

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