新たに提起した「新しい原価方式」──議員報酬算定方式における原価方式の妥当性
議員報酬の算定には、多様な方式が想定できる。議員報酬を考える場合、原価⽅式(蓄積⽅式)、⽐較⽅式(類似団体⽐較)、収益⽅式(成果重視)が想定できる。そのうち原価⽅式がベターだ。
第32次地⽅制度調査会答申(令和2年)が「議員報酬の水準の検討に当たり、議員の活動量と⻑の活動量を⽐較し、その割合を基に、住⺠と向き合い適正な水準について議論するなどの積極的な対応を講じている事例もある」と指摘しているのは、町村議会モデル(昭和53年、平成31年改訂)の原価⽅式である。
議員の活動量を基本の数値として用いる原価⽅式を採用している。そのポイントの一つは、原価⽅式が活動量(時間・日数)を重視していることである。しかし、これだけだと住⺠から活動量(時間・日数)が⻑ければいいわけではないという批判を浴びる。つまり、内容(住⺠福祉の向上)が問われることになる。そのため、活動内容を踏まえた原価⽅式が必要だ。
そもそも、⽐較⽅式は参考にはなるが、報酬額の根拠にはならない。比較をするとすれば、住民自⺠⾃治を進める議会とその条件の報酬を参照することは大いに推奨したい。つまり、その報酬額や定数でしっかりと監視や政策提言ができているかという調査を前提とした⽐較であれば有効である。単なる数値を見るだけでは、根拠にはならない。
また、収益⽅式は報酬額の引き上げの根拠として説得力があるし、⾃己評価であれ議会としての収益を住⺠に発信することは必要である。しかし、その方式の算定⽅法は確立しておらず、それと報酬とを直接関連付けることは困難である。とはいえ、原価方式の中に議会・議員活動の内容・成果を含めて説明することは必要である。原価方式を単なる活動量(時間・日数)の累積としてはならない。 町村議会モデルのもう一つのポイントは、地方制度調査会(以下「地制調」という)も提起した「住⺠と向き合い適正な水準について議論するなどの積極的な対応」に資することである。議員報酬は「住⺠⾃治の根幹」である議会の構成員の条件であるがゆえに、住⺠に説明することが不可⽋である。議員報酬額は科学的に算定できるものではない。根拠が明確な原価⽅式によって算出された議員報酬額であっても、算出された数字はあくまで説明責任を果たすための素材を提供するものであり、それに基づき住⺠に説明し議会・議員活動の理解を広げることも重要な目的の一つである。
令和4年報告書は、今までと同様に原価方式を採用している。平成31年報告書にも含まれていたが、特に二つのことを強調している(3)。
一つは、原価⽅式は活動量を素材に議員報酬を算出するが、単なる量ではなく活動内容を⽰すことを含んでいることである。「活動内容を踏まえた原価⽅式」である。
令和4年報告書では、議員の活動量を基本の数値として用いる原価⽅式を採用している。前述したように原価⽅式は、活動量(時間・日数)を重視するが、これだけだと住⺠から批判を浴びるため、活動内容(住⺠福祉の向上)を踏まえた原価⽅式が必要となる。 もう一つは、それを議会改革を進める要素に活用するならば、議会改革がある程度進んでいる議会と、議会改革がそれほど進展していない議会とでは、活動内容や活動量に違いが生じることである。活動内容を踏まえた原価⽅式は、現行の活動からの積算であるが、逆に将来にわたる議会・議員活動への期待値としても設定できる。新たな議会像を明確にした議会・議員活動を想定して議員報酬額を想定する⽅式も内包している。