公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会登録医業経営コンサルタント
小野瀬由一
1 はじめに
国の介護サービス報酬基準である介護報酬は3年ごとに改定が行われます。
本稿では、近年頻発する大規模地震や台風等の自然災害、2020年に勃発した新型コロナウイルス感染症パンデミック、団塊世代の全てが75歳以上となる2025年問題、そして、団塊ジュニア世代が65歳以上になり高齢人口が最大化する2040年問題等を踏まえ、介護サービス経営の持続化に向けて行われた令和3年度介護報酬改定の重点項目と対応ポイントに焦点を当てて解説します。
2 介護制度の基礎知識
本論である介護報酬に入る前に、介護制度の基礎知識として、介護保険制度の仕組み、介護サービスの種類や介護報酬の仕組みについて再確認しましょう。
(1)介護保険制度の仕組み
介護保険は市区町村の住民基本台帳に住所を有する40歳以上の住民に適用される保険制度です。被保険者は40歳以上65歳未満の高齢性障害による第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者となっています。被保険者は、ケアプランに基づき要介護度に応じた介護サービスを決められた回数だけ受けることができます。ただし、被保険者が介護サービスを受けた際は、所得に応じて、利用料の1割から3割を自己負担する必要があります。
介護サービス事業者は、残りの介護サービス料を国民健康保険団体連合会から3か月後に受け取ることができます。したがって、介護サービス事業者が事業運営を継続するためには、3か月分の運営資金を調達する必要があります。
(2)介護サービスの種類
介護保険による介護サービスは、①介護予防サービスと②介護サービスの2種類に大別され、各サービスは、管轄により市区町村サービスや都道府県サービスに区分されます。
① 介護予防サービス
市区町村が行う介護予防サービスは、地域密着型介護予防サービスと介護予防支援があります。地域密着型介護予防サービスとしては、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護と介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)があります。
また、都道府県が行う介護予防サービスは、訪問サービス、通所サービス、短期入所サービスや介護予防福祉用具貸与等があります。訪問サービスとしては、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導があります。一方、通所サービスとしては、介護予防通所リハビリテーションがあります。他方、短期入所サービスとしては、介護予防短期入所生活介護(ショートスティ)と介護予防短期入所療養介護があります。
② 介護サービス
市区町村が行う介護サービスは、地域密着型介護サービスと居宅介護支援があります。地域密着型介護サービスとしては、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)等と居宅介護支援があります。
また、都道府県が行う介護サービスは、居宅介護サービスと施設サービスがあります。居宅介護サービスとしては、訪問介護(ホームヘルプサービス)、訪問入浴介護、訪問看護等を行う訪問サービス、通所介護(デイサービス)と通所リハビリテーションを行う通所サービス、短期入所生活介護(ショートスティ)と短期入所療養介護を行う短期入所サービスがあります。
施設サービスとしては、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設と介護医療院があります。