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2021.10.25 ICT活用・DX

「ハード」の整備から「ソフト」「指導体制」の充実へ ─ICT教育の質的充実のために─

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学校現場の対応と課題 

 ICT教育環境が整備された今年度は、ある意味でICT教育元年ともいえると思います。子どもの学びに資する効果的なICT教育のあり方を、各学校が模索し、試行錯誤する姿が見られます。学校内での研修は、通常、授業研究をテーマとすることが多いですが、今年度はICT教育をテーマとする学校が多いようです。教育委員会等が主催する研修機会も設定され、筆者が関わる学校においても、月1度の校内研修に加え、夏休み期間中には外部のICT教育専門家を招へいした研修が開催されています。  
 一方、既述のとおり、GIGAスクール構想は当初の計画を前倒しして実施されたため、学校現場の準備期間が十分に確保できないまま、端末が導入された面も指摘できます。筆者が2021年3月に訪問した学校では、数週間後に新年度が始まる時期に、届いたばかりの端末を開封しセットアップしている教師たちの姿がありました。例えば、学校は、教育活動の円滑な実施や教師の負担軽減のためにボランティア等の協力を依頼することがありますが、今回のGIGAスクール構想の場合、新型コロナウイルス感染症のため外部からの学校訪問が限定され、通常であれば得られた援助を得ることが難しい現状がありました。結果として、多忙といわれる教師の負担がさらに増加したことが指摘できます。  
 また、これまで主に黒板とチョークを使って授業をしてきた教師にとって、ICTを活用した授業形態への突然の変更は困難が伴います。端末の使い方だけでなく、ICT教育の実践方法について、専門家からの支援や助言は不可欠といえるでしょう。文部科学省はICT教育の円滑な導入・展開のため、「ICT活用教育アドバイザー」等の支援スタッフを予算化しています。しかし、学校が必要とする専門性を有した人材を確保・派遣することの難しさがあり、時宜にかなった支援を得ることができなかった実態も指摘できます。  2017年公示の新学習指導要領は、小学校は2020年度、中学校は2021年度、高等学校は2022年度が実施年度となっています。学習指導要領改訂への対応は、通常でも多くの検討事項が挙げられます。加えて、新型コロナウイルス感染症、GIGAスクール構想にも対応しなければならない教師の実態があります。短期間でこれほどにICT教育が普及・拡大した背景には、子どものために懸命に取り組む教師たちの頑張りがあることを、私たちは認識しておく必要があるように思います。

ICT教育の充実に向けて  

 ICT教育の充実のために、ここでは3点を挙げたいと思います。  
 1つ目に、「ハード」「ソフト」「指導体制」の一体的推進です。文部科学省は、GIGAスクール構想の実現のために「ICT環境整備の抜本的充実:ハード」「デジタルならではの学びの充実:ソフト」「日常的にICTを活用できる体制:指導体制」の3点を挙げています。今年度は「ハード」が整備された状況であり、「ソフト」や「指導体制」の対応や整備は十分とはいえず、今後の更なる推進が不可欠と考えられます。1人1台端末を礎とし、良質な教材や学習活動事例の蓄積、教師を支援する仕組みづくりが求められます。例えば、実践事例の共有ため、文部科学省はウェブページ「StuDx Style」を運用していますが、こうした教師がすぐに活用できる好事例の共有ツールを積極的に開発していくことが挙げられるでしょう。学校のニーズに即した専門的知識や技術を持った人材の派遣等も挙げられます。三者を一体化させて取り組んでいくことが重要といえます。  
 2つ目に、中長期的な視点でICT教育支援を継続することです。今回、国の支援によってICT教育環境が整備されました。今回のICT教育推進の機運を絶やすことなく、一時的ではない継続的な支援が必要です。ICT端末は、数年ごとに更新を行う必要がありますが、現状GIGAスクール構想は今回だけであり、今後は各自治体の対応・判断となります。換言すれば、ほぼ同時期にスタートしたものの、今後の取組みにおいて自治体間で相違が生じることが想定されます。また、自治体間格差だけでなく、学校間格差や学校内格差も顕著になってくることが予想されます。今後は学校教育のICT化がスタンダードになっていきます。子どもの学びが阻害されることのないよう、必要な支援を継続的に講じていく必要性が挙げられます。  
 3つ目に、ICT端末を「学びの道具」にすることです。中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」(2021年)は、「個別最適な学び」を掲げ、その実現のためにICTの活用が重要と述べています。確かに、子ども一人ひとりの教育ニーズや学習状況に応じた学習機会を確保・提供するために、ICTは効果的と考えられます。一方、ICT活用による効率化された学習は、教師と子どもの創造的なやりとりや工夫、探求的学習や深い思考とは相反する面を持ち合わせていることも指摘できます。また、学びを孤立化させてしまう可能性も考えられます。子どもが鉛筆やノートを使うように、ICTをいかに「学びの道具」にすることができるかが、ICT教育の充実のためには重要といえます。そのためには、教師の専門性の向上が求められますし、2点目と関連しますが、それを支える仕組みの構築が求められるといえます。  
 学校のみで対応できることには限界があります。ICT端末は整備したのだから後は学校が対応するというのではなく、GIGAスクール構想を契機として、学校でのICT教育を持続可能なものにするために、行政と学校が一体となって、継続的な支援と関わりを検討していくことが求められます。

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