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2021.04.12 コロナ対応

〈新型コロナウイルス感染症対策〉 市民のニーズ分析と支援制度 ~新型コロナ禍1,800件超の法律相談事例から~

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市民相談の全体的な傾向~労働問題と消費者問題の増大

 相談者のうち「非事業者」(1,540件)の相談内容の傾向は、以下のとおりである(報告書より抜粋)。「労働問題」(30%)と「消費者問題」(21%)が特に多く、「公的支援制度」(11%)と「借入金問題」(7%)も比較的多い割合を占めている。このほか、グラフの項目として表示されている「賃料問題」、「診療問題」、「子どもの問題」、「外国人特有の問題」、「その他の人権問題」、「DV・虐待」は、割合としては全体の5%未満のものであるが、決して無視してはならない深刻な政策課題があることを証明している。
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出典:日弁連報告書

図1 個人の非事業者による相談内訳
(1,540件:2020年4月20日~7月22日)

労働問題~休業手当や解雇問題の深刻化

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出典:日弁連報告書

図2 個人の非事業者の労働問題に関する相談内訳
(464件:2020年4月20日~7月22日)

 2020年4月20日から7月22日までに、個人の非事業者の労働問題に分類された相談は1,540件のうち464件に上った。その中でも特に多かったのは「休業手当」(36%)と「解雇」(22%)に関する相談であった(報告書を参照)。日弁連の分析によれば、初期の1か月のうちは、「休業手当」に関する相談が多く、その後は「解雇」に関する相談が多かったという。2020年3月の教育機関の一斉休校要請に始まり、共働き世帯やひとり親世帯を中心に、休業による収入減少が起き、さらに4月以降の緊急事態宣言と広範な自粛要請がそれに拍車をかける形になったのである。特に、新型コロナウイルス感染症に起因する雇用関係の政策が十分に整備される前に緊急事態宣言が発令されたことから、休業に伴う大きな混乱があったことは想像に難くないだろう。加えて、数か月のうちに、休業措置から解雇あるいは雇止めなどに事業者が舵(かじ)を切っていった生々しい様子が見て取れる。
 2021年4月2日時点では、労働者の支援政策としては、「雇用調整助成金」、「産業雇用安定助成金」、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」、「トライアル雇用助成金」が主なものとして挙げられる(内閣官房「新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内」)随時更新)。特に「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」は、事業者が休業手当を支払わない(支払えない)ケースにおいても、労働者が給付金を受け取れる優れた制度である。
 しかしながら、この制度が創設されたのは2020年7月になってからであり、本電話相談期間の終盤になってやっと登場した制度である。このため、2020年の最初の緊急事態宣言の頃には、休業手当を支払う余力のない事業者の中には、労働者を解雇し、雇用保険の失業給付を受けてもらうという対応をせざるを得ない事例もあった。先の見通せない環境で労働者に再就職の見込みは乏しく、事業者にとっても労働者や技術者の流出で事業存続が脅かされる事態を招くことになりかねなかった。2020年7月の制度創設までの政策の空白については、大きな教訓として記憶しておくべきと思われる。

消費者問題~キャンセル料や悪質商法問題

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出典:日弁連報告書

図3 個人の非事業者の消費者問題に関する相談内訳
(325件:2020年4月20日~7月22日)

 2020年4月20日から7月22日までに、個人の非事業者の消費者問題に分類された相談は1,540件のうち325件に上った。その中でも特に多かったのは「キャンセル料」(60%)と「返金」(24%)に関する相談であった。また「悪質商法」(3%)も特徴的な相談として現れた(報告書を参照)。
 緊急事態宣言による旅行、イベント、式典、各種出張のとりやめなどにより、契約解除や不履行による返金問題・キャンセル料問題が多数勃発したのである。例えば「結婚式の中止」については、キャンセルや返金に関して争う金額も大きく、典型的な紛争事例として顕現していたようである。
 悪質商法は、2020年4月の法律相談全国統一ダイヤル実施初期よりも、6月から7月頃の方が、件数が多かったというのが日弁連の報告である。最初の緊急事態宣言が5月に終わり、経済活動が再び増加し始める頃に、様々な「詐欺的なコロナ対策」や「コロナに関する給付金を騙(かた)る詐欺」などが発生したのではないかと考える。
 特に強調したいのは、感染症に関する正しい知識は、その対策を含めて必ず政府の信頼できるウェブサイトから情報を収集しなければならないという点である。主に「消費者庁」新型コロナ関連消費者向け情報や「厚生労働省」新型コロナウイルス感染症についてなどを参照することで、科学的に正しい情報を収集することが必要である。SNSや企業広告などで様々なコロナ対策情報が氾濫しているが、行政機関、教育機関、事業者らは、利用者、子どもたち、従業者を守るため、誤った対策や科学的論拠の乏しい対策をとることがないよう留意しなければならない。正しい情報の取捨選択をした上での医学的・科学的な論拠を持った対応は、行政機関・学校・企業などの組織が、職員や子どもたち、従業員、顧客などの関係者の生命や身体を守る「安全配慮義務」を果たす上でも重要な視点である。

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